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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第1章 【深窓のご令嬢?】


 だがこの日は2人で箒を乗り回している内に決められた範囲内では我慢が出来なくなり、上空からなら魔物に襲われる心配もないだろうと、つい結界の外に出てしまったのだ。

 暫くは森の上で思う存分空中遊泳を楽しんでいた2人だが、突然クリスが「最近生まれたカラスのヒナを見に行こう」と言い出した。実は前々から興味はあったのだが、地上から木の上にある巣の中など覗けるものではない。だから今がちょうど良い機会だと考えた彼女は、ドラコにそう申し出たのだ。

 もっと空の散歩を楽しみたいドラコは最初反対したが、箒を貸してもらっている身である彼は、しぶしぶ彼女の願いを聞き入れてしまった。
 ――だが、これが結局事件への発端となってしまうのだ。

* * *

「それでクリス、いったいどこにヒナがいるのさ」
「多分そこらへん。もっと近づけば分かる」

 落ちないようにドラコの背中にしっかりとつかまりながら、クリスは足元にある木々達を指差した。確かに言われてみればその辺りからカラスの鳴き声はするが、うっそうと茂った、しかも危険な動物がすむ森に近づくのは、ドラコとしては気分の良いものではなかった。

「本当にいくのかい?なんだかいつもよりカラスどもが騒いでるみたいだけど……」
「ヒナがいるからだろう。でも大丈夫だ、私がいる」

 常識から考えれば、繁殖期の巣に近づくなど、こんなに危険なことはないのだが、クリスはさも簡単なことのようにサラリと言ってのけた。

 森に住みつくカラスは元々、代々グレイン家に使えてきた使い魔の一族で、クリスにしてみれば森に住むカラスは家の所有物も同然だ。クリスもネサラという名のカラスの使い魔を持っていて扱いには慣れているし、まさか主人を襲いはしないだろうという慢心が、彼女に妙な自信を与えていた。

 操舵手のドラコは逆に嫌な予感がしていたが、それをクリスに言い出すことは出来なかった。クリスは自分の興味がないものにはとことん無関心な反面、一度興味を持ってしまうと一切他人の話に耳を傾けない性格なのは分かりきっていたし、なにより耳元で聞こえる彼女の声が、ドラコの意思を鈍らせた。

 ドラコは覚悟を決めると、ゆっくりと森に向かって箒を降下させていった。
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