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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第29章 【Draco and Draco】


「そういえば、最近勉強ばっかりでやたらと肩がこってるんだよなあ。誰か揉んでくれると嬉しいんだけど……」
「……分かった、揉んでやるよ」
「揉んで“やる”?」
「揉ませていただきます!」

 やっぱり碌でもないことだ。クリスは心の中で舌打ちすると、ドラコの後ろに座って見よう見真似で肩を揉みはじめた。召使の真似事なんて屈辱的だったが、これもハグリッドの為だ。

「ああ、そうそう――って、痛い痛い!そこじゃない、もっと左だ」
「そんなこと言われたって分かんないよ」

 普通子供のお小遣い稼ぎと言えば、肩揉みか家事手伝いと相場は決まっているが、仮にもお嬢さま育ちのクリスにそんなものは無縁だった。今まで他人の肩なんて揉んだことはおろか、揉もうと思ったことすらない。

「今度は右にいきすぎだ、もっと……って違う、そこは骨の上だ!」
「これでも一生懸命やってるんだから、文句言うな」
「一生懸命ならいいって問だ、痛っ――ああ、くそっ!もういい」

 クリスが手を放すと、ドラコはぶつぶつ文句を言いながら自分で肩を擦っていた。そんなに力を込めたつもりはないのに、もしかしたら初めから肩なんてこっていなかったんじゃないのか。
 すると今度は、ドラコは何を思ったかクリスのひざの上に頭を乗せてきた。反射的に引っぺがしてやろうと思ったクリスだったが、まさかこれ以上ドラコの機嫌を損ねられない。

「ふう、これならさっきと比べてまだマシだ」
「なあ……いつまでこうしてなきゃいけないんだ?」
「僕が良いと言うまでさ。まあ、当分の間は僕の言う事を聞いてもらうつもりだけれどね」
「当分の間!?」
「嫌なら構わないよ、魔法省にふくろう便を送るまでさ。知ってると思うけど、魔法省には父上の知り合いも沢山いる」

 クリスは目の前にあるおでこを思いっきり引っ叩いてやりたい衝動を、必死になって押し止めた。今そんな事をしたら、ハグリッドは確実に免職、いやアズカバン送りになる。

「そうだ宿題もたまってきてるんだった。『天文学』なんだけど、誰か得意なやつはいなかったかなあ?」
「……『天文学』だな。分かった、代わりにやるよ」
「嬉しいな、ついでに『魔法薬学』と『魔法史』も頼むよ」
「ハイ、ハイ」
「ハイは一回だ」
「ハ・イ・ッ!」
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