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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第29章 【Draco and Draco】


 その日の放課後、早速クリスはドラコを見つけようと校内を探し回った。生徒の行く場所なんて限られてはいるが、こう広くっては探すのも一苦労だ。みんなもせめてそれくらいは手伝ってくれてもいいのに、3人とも「幸運を祈る」と言って談話室に引き上げてしまい、クリスはなんとも言えない理不尽さを感じながら、ドラコが行きそうな場所を順番に巡っていった。
 そして校庭に差し掛かったとき、大きなブナの木の下ででかいの2人に囲まれているブロンドの少年を発見すると、クリスは慌てて声をかけた。

「ドラコッ!」
「……ん?やあ、クリスか」

 ドラコはクリスの顔を確認すると、意味ありげにニヤッと笑った。もしかしなくても、クリスがくる事を予想していたんだろう。

「お前達は先に寮に戻っていろ――めずらしいな、クリス。君から僕に声をかけてくるなんて。いつもは僕の事を無視するくせに」
「それは……その……そうだっ、今日はどうしても聞いてもらいたいことがあって来たんだ」
「へえ?君が僕に“お願い”ねぇ。言って御覧よ」

 完全に優位に立ったドラコは、あごを上げて嫌味たっぷりにクリスを見下ろした。身長はさほど変わらないくせに、相手の弱みを握ったときのドラコは、目線がいつもの3倍は上に見える。
 クリスは視線に怯みながらも、ハグリッドのためを思ってなんとかドラコの嫌味に耐えた。

「虫が好いのは分かってるけど、お願いだ!今日見たことは誰にも言わないで欲しい、その代わり私がドラコの言うことなんでも聞くから」
「……何でも言う事を聞く、か――本当に何でも言う事を聞くんだろうな?“聞く”だけじゃないぞ、ちゃんと“叶えて”もらうからな」
「ほ、本当さ。婚約を認めろってこと以外なら」

 図星を指され、クリスは慌てて婚約の話しを付け足した。しかしドラコは「そんな事分かっていたさ」とでも言うように余裕の笑顔を崩さなかった。これは確実に何か良くない事を考えている笑みだ。

「ハリー達と手を切れっていうのも無しだぞ」
「誰もそんな事考えて無いさ。……そうだな――」

 ドラコはおもむろに木の根元に座ると、わざとらしく肩に手をあてて首を回した。
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