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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第29章 【Draco and Draco】


 ハグリッドは息がかかるほどドラゴンの雛に近づくと、震える大きな手をゆっくりと包み込むように近づけた。もう完全にクリス達は蚊帳の外だった。下手したら本当にロンの言うとおり嬉しさのあまりドラゴン片手に庭でスキップしてもおかしくない位、ハグリッドはドラゴンの誕生を喜んでいた。

「……でも、なんて言うか、その……」
「可愛くない」

 ハリーの言葉をクリスが引き継ぐと、ハーマイオニーが慌てて口を抑えつけた。しかしその言葉はハグリッドに全く聞こえていないようだった。皺くちゃのトカゲに、骨っぽい翼がくっついているだけのドラゴンの雛を、ハグリッドはまるで芸術品のように崇めた。

「見ろ……この美しい光沢を。まるで黒曜石のようだ……それに太陽みてぇに輝く大きなオレンジ色の瞳。はあ、こんな美しい生き物がこの世にいるなんて――おっと!」

 ドラゴンの雛が小さくくしゃみをすると、その拍子に飛び出た炎がハグリッドのヒゲを焦がした。小さいが本物の炎だ、コブのような鼻からは煙が吹き上がっている。そればかりかハグリッドが手を差し出すと、その指にガブッと噛み付いた。生まれたばかりでも、もうドラゴンとしての本能が備わっている。

「見ろ、ちゃんとママが誰だか分かってるんだ!おーよちよち、まっててね。今ママちゃんがミルクをあげるからね」
「ミルクじゃなくてブランデーと鶏の血だろ」

 赤ちゃん言葉で話すハグリッドに、一同は一抹の不安を感じていた。ハグリッドは、今後このドラゴンをどうするつもりなんだろう。まさかこのままこの家に住まわせるつもりなのだろうか。

「ねえハグリッド、このドラゴンってどれ位大きくなるのかしら?」
「そうだな。だいたいこの家より――」

 小屋の中をぐるっと見回したハグリッドだったが、突然表情を凍らせると、弾かれるように立ち上がって窓際に駆け寄った。締め切っていたと思っていたカーテンが僅かに開いていて、その隙間から城に向かって走り去る少年の後姿が見える。遠目からでも、4人にはそれが誰なのかすぐに分かった。

「――見られた……子供だった、金髪の男の子だ」
「マルフォイだ!あいつこのままじゃきっと先生に言うぜ」
「告げ口される前に、ドラゴンは森に放すべきよハグリッド。今ならまだ間に合うわ」
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