第29章 【Draco and Draco】
この台詞がハーマイオニーに火をつけた。勢い良く飛び出していったロンを追いかけると、襟首を引っ掴まえこの時期の授業がどんなに大切が説き聞かせた。流石は頼んでもいないのに学習予定表なんてものを作ってくれるほどだ、授業をサボるなんてお天道様が許しても、ハーマイオニーが許してくれるわけがない。
「どうしてもって言うなら放課後にしましょうよ。それなら私も文句は言わないわ。それに私達が授業をぬけてハグリッドの小屋に言ったってばれたら、ハグリッドだって困る事になるのよ」
「冗談じゃないよ、卵はすぐ孵っちゃうんだぜ?ハグリッドが喜びのあまりドラゴン片手に庭を飛び跳ねてたらどうするんだよ」
「ストーップ!!声が大きいよ2人とも。誰かに聞かれたらどうする――」
ハーマイオニーより少し遅れて到着したハリーが、2人の間に割って入った。――が、遅かった。廊下の先に、よりによってあのドラコがジッとこちらを見つめていたのだ。そして一瞬だけ口の端をニヤリと歪めると、何も言わずにその場から立ち去っていってしまった。
「……今の、聞かれたかな?」
「多分……」
ハリーたちの顔を見ると必ずなにか言って来るドラコが、今日に限って突っかかってこないなんて有り得ないはずだ。4人はとりあえず談話室に戻り、午前中の休憩時間に急いでハグリッドのところへ行こうと話し合った。ドラコの事を考えると、放課後は避けた方がいいと思ったのだ。
その日の休み時間開始のチャイムが鳴るや否や、4人は一目散にハグリッドの小屋へ向かった。煙突からはまだもうもうと煙が出ていて、運が良い事にまだドラゴンは孵っていないらしい。小屋に入ると、前と同じようにムワッとする空気の中でハグリッドがこれ以上ない程興奮していた。
「お前さん達、ちょうどいいところに来たなあ!!もうすぐだ!もうすぐ卵が孵るぞ!!」
ハグリッドはウロコの手袋をはめ炎の中から丁寧にタマゴを取り出すと、慎重にテーブルの上に置いた。真っ黒い丸いタマゴが、コトコト、コトコトとかすかに揺れている。その揺れが段々と大きくなり、パキパキと言う音に変わると、5人の見つめる中本当にタマゴからドラゴンの雛が生まれた。
「いやったあぁ!生まれた、ついに生まれたぞお!!」