第28章 【過ぎ去りし平穏の日々】
「でもドラゴンを飼うのは1709年以降法律で禁止されてるんだよ。そんなことハグリッドだって知ってるはずなのに。だいたいドラゴンと“賢く暮らす”方法なんてあるわけ無いんだ。あんな凶暴なやつら――チャーリーがルーマニアで野生のドラゴンにやられた火傷を見せてやりたいよ」
しかし結局、嫌な予感は見事なまでに的中してしまった。4人が言われたとおりハグリッドの小屋に行って見ると、カーテンは全部締め切られ、煙突からはもくもくと煙が上がっていた。どこからどう見ても普通じゃない。
「ハグリッド、僕だよ。ハリーだ」
「入れ」と短く返事をすると、ハグリッドは小さくドアを開け、隙間からハリーたち4人を小屋に入れるとすぐに扉を閉めてしまった。外から見たとおり、部屋の中は熱気が充満して息をするのも大変なほどだった。
「それで、お前さん達いったいどんな用があるってんだ?」
「賢者の石のことを知っているのは、ハグリッドやダンブルドア以外に誰がいるのか聞きたいんだ。もしもの時の為に、僕らの力になってくれる先生を知っておきたいんだよ」
「そんなもの知らなくっていい。もしもの時なんてもんは訪れんし、それに俺も全員のことは知らん」
「“全員?”それじゃあフラッフィー以外にも、賢者の石を守っている奴がいるってことか」
クリスが聞き返すと、ハグリッドは歯を食いしばり、自分に言い聞かせるようにして怒鳴った。
「もうこれ以上俺は何も言わんぞ!それでなくともお前さんたちは知りすぎてる!」
「そんな!私たちの頼りはハグリッドだけなのに!」
ハーマイオニーが悲痛そうな声でそう言うと、ハグリッドのヒゲがピクッと動いた。それを見逃す4人ではない。目配せしあうと、すぐに皆で「ハグリッドおだて作戦」に乗り移った。
「そうだよなあ、寮監のマクゴナガル先生より、僕らハグリッドの方がずっと頼りにしてるし」
「なんて言ったって、校長先生が一番信頼を置いている人物だからな」
「そうだよ、じゃなかったら僕や賢者の石を引き取りに行くなんて重大な仕事、任せる訳ないもんね」
「そのハグリッドが知らない事なんて、このホグワーツにあるのかしら」
ハグリッドの食いしばっていた歯は、今やニッコリとした笑顔に変わっている。大層ご満悦そうにハグリッドは鼻を鳴らした。