第28章 【過ぎ去りし平穏の日々】
テーブルの近くまで戻ると、そこにはクリスたちの声に誘われたのかハリーとロンが立っていた。
「あっ、ホラ僕の言ったとおりハグリッドだ」
「本当だ。図書館でなにしてるんだい?」
「お、お前ぇさん達こそ、3人で何やってるんだ」
するとハグリッドは余計に挙動不審になり、目を泳がせながら話をすりかえた。
「まさか……まだニコラス・フラメルについて調べてるんじゃ――」
「そんな事、僕達もうとっくに分かっちゃったよ。それに、賢者の石のこともね!」
「ばっ、バカ!!静かにせんか!」
ハグリッドは慌ててロンの口を塞いで辺りを見回した。ハグリッドとしてはもうこれ以上、自分の所為で誰かに秘密を聞かれる訳にはいかない。だが、悪いがクリスたちももうこの件から身をひくつもりもない。
「ねえ教えてよハグリッド。賢者のい――」
「シーッ!!頼むからこんなトコでこれ以上言わんでくれ。どうしてもっちゅうなら……後で俺の小屋にきてくれや。ただし、教えるなんて事はできねぇぞ」
「OK,じゃあまた後で」
ハリーが笑顔で承諾すると、ハグリッドはどっと疲れたように背中を丸めて図書室を出て行った。そのお陰で、ハグリッドの背中になにか丸い物を背負っていたことがハッキリと分かった。
「ハグリッド、何か背中に持ってたよね?」
「もしかして……石に関係あるものかもしれない」
「僕、ハグリッドが調べてた棚を見てくるよ!」
ロンは意気揚揚と棚の奥へ消えると、山のように大量の本を抱えてテーブルまで戻ってきた。どれもこれも古臭い、時代遅れなものばかりだ。
「なになに――『イギリスとアイルランドのドラゴンの種類』だって?」
「こっちは『ドラゴンの飼い方』と『一目でわかるドラゴンのタマゴの見分け方』ですってよ」
「他にもあるよ。『ドラゴンの生態系』『ドラゴンとの賢い暮らし方』『ドラゴン大百科』。これだけあれば、ハグリッドが何を調べていたのか馬鹿だって分かるよ」
「そう言えばハグリッドに初めて会った時、ずっと昔からドラゴンを飼いたいって言ってたよ」
ハリーの言葉に、ロンは渋い顔で声を潜めた。彼の中でも、嫌な予感が漂い始めている。