第28章 【過ぎ去りし平穏の日々】
確かに自分達にできる事は限られている。しかしクィレルだって悪に加担したくはないはずだ。少しでも力になってあげられれば、そう簡単に屈したりしないだろう。あとはクィレルの勇気に賭けるしかない。
悩んでいたハリーも、やがてクリスの言葉に背中を押されて顔を上げた。
「よしっ、やろう。あいつの計画を止められるのは、僕達しかいないんだ」
「……そうだな、どうせスネイプが賢者の石を手に入れたら、僕達はお仕舞いなんだ。こうなりゃヤケだ!やれるトコまでやってみよう」
「私も、乗りかかった船だもの。やるなら最後までやらせてもらうわ」
「よし、そうこなくっちゃ!」
ハリーに続き、ロン、ハーマイオニーも意志を固めたようだ。1人では無理でも、4人いれば何とかなるかもしれない。ハリー、ロン、クリス、ハーマイオニーの4人の気持ちが、スネイプという壁を前に久しぶりに1つになったのを感じた。
「賢者の石が学校にあるのは今学期までだ。その間、なんとしても賢者の石を守り抜こう!」
「期限は約4ヶ月か、うん!なんとかな――」
「あああああぁぁぁぁっ!!」
ハリーの言葉を遮るように、突然ハーマイオニーが大声を上げた。あまりの声の大きさに、間近で聞いてしまったクリス達は、暫く耳鳴りが止まなかった。
「なんだよハーマイオニー、いきなり耳元で大声出すなよ」
「そうよっ、あと4ヶ月……いいえ、あと3ヶ月しかないのよ!!」
「なに言ってるんだ、4ヶ月だろう」
「いいえ!学期末試験まであと3ヶ月しかないわ!!」
スネイプの企みが明らかになった時よりもよっぽど深刻そうな顔をして驚くハーマイオニーを、ハリー、ロン、クリスの3人は目を点にして見つめた。突拍子もなく告げられた「学期末試験」という言葉に、誰一人として頭が付いていかない。
「私と言うことが……何て事なの!最近ドタバタしすぎてこんな大切な事を忘れるなんて!!」
「あの~、もしもしハーマイオニーさん?」
「それでなくとも初めての試験なのよ。ああっ、パーシーに頼んで、過去問とか貸してくれないかしら……でないと対策が……」