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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第27章 【一難去ってまた一難】


 これ以上邪魔が入らないよう、ハリーとクリスは人気を避けて禁じられた森の付近までやって来た。外は思ったより寒かったが、熱を帯びた頬には丁度良かった。それに冬独特の静かで澄んだ空気が気持ちを引き締めてくれる。
 クリスは冷たい空気を胸いっぱい吸い込むと、勢い良く頭を下げた。

「ハリー、ごめん!私ハリーの気持ちなんて全然考えずに、凄く酷いことを言ってしまって……それで君を傷つけたことは本当に悪かったと思ってる。本当にごめんなさい」
「……本当に悪いって思ってる?」
「もちろん。ハリーが許してくれるなら、私なんでもするよ」
「それじゃあ、仲直りしよう」

 えっ、と驚いて顔を上げると、ちょうどハリーと目が合った。若草色の瞳が、冬の空の下でやけに綺麗に映えている。

「本当はもう怒ってなんかないよ。それより、僕のほうこそ君に謝らなきゃいけないんだ。クリスが僕に謝ろうとしてくれてたのは知ってたのに、つまんない意地なんてはっちゃって……ホントごめんね」
「いいんだ、そんなの。ハリーが許してくれるなら」
「よかったぁ。――それじゃあこれで仲直りだね」
「う、うん!」

 頬に触れる風は冷たかったが、クリスの心には久しぶりに温もりが満たされていた。それはハリーも同じで、その表情にはクリスマス以降からずっと付きまとっていた陰りは見えない。2人はわだかまりが解けたことに、どちらからともなく満面の笑みを浮かべた。

「そろそろ戻ろうか、きっと寮でパーティやってるよ」
「そうだ、今日の試合勝ったんだよな。おめでとう」
「見に来てくれてたの!?」
「あ、いや…それが初めの数分しか……」
「なんだぁ、見てなかったんだ。僕あんなに頑張った――」

 言いかけて、ハリーは足を止めた。突然どうしたんだろうとクリスが顔を覗き込むと、ハリーは青ざめた表情で立ち尽くしている。

「ハリー?」
「シッ!……ちょっとこっち来て」

 ハリーは半ば無理やり背の高いブナの木の陰にクリスを引っ張り込むと、緊張した面持ちで目を凝らし、明らかに何かを待っていた。なんだか良く分からないが、クリスもジッと息を潜めてその場にうずくまっていると、複数の足音と声が、どんどんと2人のいる所に近づいて来るのが分かった。
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