第27章 【一難去ってまた一難】
「……こっ、ここここんなところに…よよ、呼び出して、一体ななななんのよよ用だい?」
「下手な芝居は止してもらおうか、我輩が何も気づいてないと思ったら大間違いだぞ」
ねっとりとした低い声と、歯切れの悪いどもった口調。間違いなくクィレルとスネイプだ。クリスはギュッと体を強張らせ、2人の会話に耳を傾けた。
「ハロウィーンの日は邪魔が入ったが……どうだ、そろそろあのハグリッドの三頭犬を突破する方法くらい見つけたのかね」
「セ、セセセセブルス……私には、何の事だか…ささささっぱり」
「とぼけても無駄だ、貴様もあの部屋の地下に『賢者の石』がある事くらい知っているだろう」
クリスとハリーは思わず顔を見合わせた。三頭犬の守る賢者の石、それを狙うスネイプ、そして脅されているクィレル。やっぱり、自分達の読みは当たっていたんだ。
「だっだけどセブルス、私は……私には……」
「……よろしい。ならばどちら側につく気なのか、もう少し考える時間をやろう。だがもし我輩を敵に回すつもりなら、その時は――」
どうなるか分かっているな。スネイプは暖かみの欠片も無い冷たい声でそう言い残すと、城の方へと戻って行ってしまった。取り残されたクィレルも暫くはその場でグズグズすすり泣いていたが、やがてスネイプと同じくもと来た道を引き返していった。
2人がいなくなってからどれ位経っただろう、クリスとハリーは木の陰から這い出すと、すっかり硬くなった体の緊張をほぐすように大きなため息を吐いた。
「やっぱり、スネイプは賢者の石を狙ってるんだ。ハロウィーンの日にトロールを校内に入れたのもヤツだ、間違いない。そして――」
ハリーはゆっくりクリスに視線を向けた。目を見ただけで、これからハリーが何を言おうとしているのか、クリスにははっきり分かっていた。
「そしてあいつが賢者の石が手に入るかどうかは――全て、クィレルに懸かってるんだ……」
ついさっき肩の荷が一つおりたばかりだというのに、2人の顔にはもう不安の色が差し込んでいた