第27章 【一難去ってまた一難】
「ハリー」
「うん?」
「その……ありがとう」
「……ロンもクリスもネビルも無事だったんだし、まあ…いっか」
そう言ってハリーは屈託の無い笑顔を見せるので、クリスは胸がドキッとしてとっさに言葉を失ってしまった。ちょうどそこへ、にぎやかな医務室に痺れを切らし始めたマダム・ポンフリーが、ハリー達に寮に戻るように言い出してその場が紛れたので、クリスは少しホッとした。
みんなの無事を知り、安心して医務室を後にしようとハリーが腰を上げた時、突然ハーマイオニーがクリスに小さく耳打ちをした。
「このまま帰しちゃっていいの?チャンスは今よ」
「あっ……」
和やかな雰囲気に流されそうになっていたが、クリスはまだ1番肝心な言葉を言っていないことに気づいた。クリスは出口寸前でハリーを引き止めた。
「「――あのっ」」
驚いた事にクリスが声をかけたと同時に、ハリーもクリスの方を振り返った。まさかこうもタイミングが被るとは思わず、明らかに戸惑うハリーとクリス。思えばあれ以来、ろくに口を利いていなかったものだから、改めて話すとなるとどうしても緊張してしまう。
しかもハリーの後ろでは双子がニヤニヤしながらこちらを伺っているし、ハーマイオニーも痛いほど視線を向けていて、話しにくいことこの上ない。
「お、お先にどうぞ」
「あー、うん。その――や、やっぱり君からどうぞ」
「えっ?いや、ハリーからでいいよ」
「いいよ、クリスから先に」
「え~っと、だから…その……」
困った。言おうと思っていた台詞はもう1ヶ月も前から用意していたのに、いざ面と向かうと言葉に詰まってしまう。しかもさっきっから、妙に心臓がどきどきしっぱなしだ。
ちっとも先に進まない2人を、外野はやきもきしながら見守っていた。
(なあハーマイオニー、あの2人さっきっからなにやってるんだよ)
(ちょっと貴方は黙ってて。いま良いところなんだから)
(ったく……まどろっこしいなぁ、ハリーのヤツ)
(いけっ、そこだハリー。男ならもっとガツンと行け、ガツンと!)
「~~ッ!ここじゃなんだし、場所を変えようか」
「そうだね、そうしようか!」