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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第27章 【一難去ってまた一難】


 しかしその静けさを打ち破るように遠くから慌しい足音が聞こえてきたかと思うと、突如蹴り倒すように勢い良く医務室の扉が開いた。

「クリスーーーーーーーーーーッッ!!」
「まあっ、いきなり何ですか!」

 突然の荒々しい登場に、その場にいた誰もが目を丸くした。試合直後に控え室から全力疾走で駆けつけた為、髪はいつもよりボサボサで眼鏡は今にもずり落ちそう、しかもユニフォームはもちろん手には箒まで握ったままだ。
 しかし当の足音の主――ハリー・ポッターはそんな事もお構いなしに、わき目も振らず一気にクリスに駆け寄ると、必死の形相で肩を掴み息も絶え絶えに堰を切ったように話し始めた。

「あっ……あのっぼ、ぼ僕は……そのっ君達が大怪我で……血を…血を流して、意識不明のこん――昏睡状態だって……聞いて、だけど、だけどぼ、僕どうしても君に言わなきゃって――」
「落ち着けハリー、なんとも無い、ただのかすり傷だから」
「――でもかすり傷だって大怪我には変わら……えっ?かすり傷?」
「そう、私もロンも大したこと無いって。ネビルは……まだ目を覚ましてないけど」

 命に別状は無い。そう伝えると、ハリーは気が抜けてずるずると床に座り込んだ。

「よ、よかったぁ~。僕、てっきり……」
「いったい誰から聞いたんだよ、そんな大げさな情報」
「……リーから」

 ロンの質問に、安心半分呆れ半分にハリーが力なく答えた。なるほど、相手がリーなら何となくその場の様子が想像できる。
 それからすぐまた足音が聞こえてくると、今度はフレッドとジョージが顔を出した。一応走っては来たみたいだが、ハリーとは違いかなり余裕が見て取れる。

「ああ~、やっと追いついた。お前は箒に乗って無くても十分早いな、ハリー」
「よう、ロンもクリスも思った通り平気そうだな」
「思った通り……って、2人とも知ってたの?」
「知ってたって言うか、大げさに騒ぐのはリーの十八番だからね」

 いつもの実況を聞いてて分からないのか?と笑うフレッドに、ハリーはますます肩を落とした。騙されたのは可哀想だと思うが、こんなに一生懸命駆けつけてきてくれたのかと思うと、クリスは有り難いような照れくさいような、なんだか胸がむずむずするような感じがした。
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