第27章 【一難去ってまた一難】
「だいたいネビルだってわざとやった訳じゃないんだし、不用意に近づいた私も悪いんだ。ネビルばっかり責められない」
「わざとかどうかは問題じゃない、アイツは僕のクリスに怪我を負わせたんだ。みてろよ、父上に言ってあんなやつ退学にさせてやる」
「だからそうやってすぐおじ様に告げ口するのは止め……ってちょっと待て、誰がお前のクリスだ!」
「僕の許婚なんだから、僕のクリスでも問題ないだろう?」
「あるっ、大ありだ!っていうかもう婚約は解消させたんじゃなかったのか?!」
ついさっき頭から血を流したばかりだというのに、クリスの頭にはもう血が上ってきていた。
ロンもハーマイオニーも「もう少しクリスは頭の血を少なくしておいたほうが良かったのかもしれない」と思ったが、あえてそれは口に出さなかった。2人とも、もういちいち喧嘩を止めるのも馬鹿らしくなってきている。
2人が視線も向けず黙々と傷の消毒を続ける隣で、クリスとドラコの言い合いは徐々にヒートアップしていった。
「婚約解消?いつ、誰が、どこでそんなこと言ったんだい?」
「先月、お前が、大広間で言ったじゃないか!」
「そんなこと僕は言ってない」
「いいや、言ったね」
「言ってない」
「言った」
「言ってない」
「絶対に言った」
「絶対に言って……「いい加減にしなさい2人ともッ!」」
ついにマダム・ポンフリーの雷が落ちると、クリスもドラコも揃って身をすくめた。腰に手をあてて肩をいからせる姿は、マクゴナガル先生に似た迫力がある。
「いいですか、ここは医務室であって喧嘩をする場所ではありません。ミスター・マルフォイ、貴方の治療はもう終わりましたから速やかに退院しなさい。もちろんミスター・グラップとミスター・ゴイル、貴方達もですよ」
「で、でもクリスの治療がまだ終わって……」
「彼方がいてはいつまでたっても治療が終わりません。さあ、分かったらご自分の寮にお戻りなさい」
「でもっ……」
「お返事は?ミスター・マルフォイ」
「……ハイ…」
その時のマダム・ポンフリーの眼光は、恐ろしいほど鋭かった。
ドラコ達が出て行くと、医務室は本来の静けさを取り戻した。あんな恐ろしいものを見せられては喋る気になれず、部屋の中は微かにネビルの寝息が響くだけで至って静かなものだ。