第27章 【一難去ってまた一難】
「本当にマダムの言うとおりよ。……はぁ、どうして男の子って喧嘩がすきなのかしら。どうせならもっと別の事で勝負すればいいのに。例えば寮の得点とか、テストの点数とか」
「そんなので勝負したがるのは君くらいなもんだ――あぁイテッ!ハーマイオニー、もうちょっと優しくやってよ」
「あらごめんあそばせ、でも殴りあうよりは痛くないはずよ」
一気に6人もの患者を診ることになったマダム・ポンフリーの手伝いとして、ハーマイオニーも忙しく皆の世話をしていた。今でこそこうやってお説教する彼女だが、最初にクリス達の怪我を目の当たりにした時は、そのままハーマイオニーの方が倒れてしまうんじゃないかという驚き様だった。あの後すぐにハグリッドが現われていなかったら、担架がもう1台必要になっていただろう。
幸いにもそのクリスも出血の割には傷が小さく、2・3日もすれば包帯もとれるとマダムは言った。ロンも、ドラコとの取っ組み合いで体中至る所に傷を作っていたが、特に大怪我というほどのものもない。ドラコも打ち身・擦り傷・鼻血くらいの軽症で、グラップとゴイルも同じような物だった。
ただ唯一ネビルだけが、最後のドラコの一撃をくらってまだ目覚めていなかった。
「……ネビル、大丈夫かな」
「君が心配する事なんてないだろうクリス、あいつは君に怪我を負わせた張本人なんだぞ」
クリスが心配そうな声を出すと、つかさずそれにドラコが反応した。
どうも都合のいい事に、ドラコの中でクリスとの喧嘩はすっかり無かった事になっているらしい。目の周りの丸い青アザと鼻に詰めたティッシュ以外は、丸っきりいつものドラコに戻っていた。
「傷が浅かったから良かったものの、打ち所が悪かったらどうなってたか分からないんだぞ。それなのに心配なんてしてやる必要はない」
「偉そうな事言ってるけどドラコ、お前だって私に怪我させた事があるじゃないか。今年の夏に箒から落っこちた事、忘れたとは言わせないぞ」
「ああ、あれか。僕は良いんだ」
「良いわけあるか!」
矛盾に満ちたドラコの言い訳に、思わずカッとなった。どう考えても、偉そうにソファーにふんぞり返って言う言葉ではないだろう。しかもそれがさも当然のように振舞うので、クリスは余計に腹が立った。