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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第26章 【大乱闘Hブラザーズ】


「ハーマイオニー、ハーマイオニー大変なんだって……」
「キャーッ!アンジェリーナ、行っけえー!!」
「決めたぁー!グリフィンドール連続シュート!!」
「キャアーーッ!!」
「だっ、ダメだこりゃ……」

 クリスが振り返って乱闘の様子を伺うと、そこには数秒前よりもっと悲惨な光景が広がっていた。もう人間の喧嘩というより、動物の死闘に近い。

「もうやめろって、ほら、みんな怪我してるじゃないか。あっ――」
「ブラッジャーがウィーズリーの頭に命中ぅ!これは痛いぞ!」

 ドラコを組み敷いたロンのこめかみに、思わず目を覆いたくなるような肘鉄が命中した。傍から見ているだけでも痛いのに、本人達は一向にやめる気配は無い。むしろ時間が経てば経つほど白熱していっている。特にネビルなんて体中殴られていないところなんて無いほどだった。

「あー、もう!グラップ、ゴイル!もういい加減やめろ!ネビルもどうなっても良いのか――」
「おおーっと、ここでハッフルパフの反撃だあ!キーパーは守りきれるのか!?」
「うわぁっ!」
「きゃあ!!」

 3人に近づきすぎたのがいけなかった。ぶん殴られたネビルの巻き添えを食らって、クリスは突き飛ばされる形で転倒し、手すりの角に思いっきり頭をぶつけてしまった。
 思いがけない少女の甲高い悲鳴に、喧嘩をしていた5人の手がピタリと止まった。

「~~~っい、痛たたた……ほら見ろ!こうなるから私は――」

 痛いなんてもんじゃない、本気で一瞬意識を失いかけた。涙目でズキズキと痛みのはしる後頭部に手をあてるクリスだったが……手にぬるりとすべる感触に違和感を覚え、ふと手のひらを見た。すると嘘みたいに、血がべっとりとついていた。

「止めました、ウッドが止めました!……っと、しかしここでまたしてもペナルティーだぁ」
「…………血だ……」

 リーの実況が、まるで別世界の出来事のように頭の中に響いていた。それどころか、クリスは自分の身に何が起こったのかすら認識できていなかった。痛みより手を染める鮮血の方がよっぽどショックが大きく、クリスは痛みも自分の頭から流れる血も全て他人事のように傍観していた。
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