第26章 【大乱闘Hブラザーズ】
屈辱に顔をゆがめるドラコだったが、とっさで受身も取れず顔面からまともにつっこんだせいで、おでこが赤く擦り剥け、おまけに鼻から血が出ていた。
しかもローブの背中にはロンの足跡がくっきり残っていて、どれほど強くロンを睨み付けたところでマヌケな姿に変わりなかった。
ロンはイタズラっぽくニッと笑うと、慣れた様子で拳を握った。伊達に男ばっかの兄弟の中で育ってきたわけじゃない、殴り合いの喧嘩だってそれなりに心得ている。
「さっきのセリフ、カッコ良かったぜネビル。……さあて、来いよマルフォイ。お前には僕の家族と友達をけなした償いをたっぷりさせてやるよ。それともスリザリンのお坊ちゃまは父上がいないと喧嘩も出来ないのか?」
「……貴様、言わせておけば!!」
ドラコがロンに素手で飛び掛った。その隙に、突然の乱入者参戦に目を丸くするグラップの腕からネビルが抜けだすと、流れるような動きでわき腹にパンチをお見舞いした。圧倒的な体型差も懐に入ってしまえば負けぬことも無い。連続で繰り出される攻撃に苦戦するグラップを助けようと、クリスを捕まえていたゴイルが助太刀に入った。
やっと自由になったクリスはどうにか喧嘩を止めようとしたが、何をどうすればいいのか全く分からなかった。ロンとドラコはお互い胸倉をつかみ、所構わず殴り合い蹴飛ばし合い取っ組み合いで椅子の間を転げ回っていて手の出しようがない。
一方グラップとゴイル、2人の巨体相手ではどう考えても分が悪すぎるネビルだったが、彼はその小さい体で勇敢に立ち向かっていった。どんなに殴られ、血が出ようとも、何度でも立ち上がって必死に食らいつき、こちらも人の話しを聞けるような状態ではなかった。
「ああっ、こらっいい加減にしろ!やめないかお前達、やめろ、やめろってば!」
「しかしグリフィンドールの攻撃は止まらない!立ちはだかる相手をすり抜け、今、ゴールッ!!」
不思議とリンクする実況、そして割れるような拍手と歓声の中にクリスの叫びは全て吸い込まれてしまった。なんとかハーマイオニーだけにでも気づいてもらおうとローブを引っ張るが、彼女の意識は全てピッチの中に注がれている。