第26章 【大乱闘Hブラザーズ】
なんと、あのネビルがドラコに向かって怒鳴った。顔を真っ赤にして、体中を震わせながら、それでも瞳はしっかりとドラコを捉えていた。
「ぼくは……ぼくは確かにみじめで弱虫で、グリフィンドールに相応しくないかもしれないけど……だけどそれでも、グリフィンドールの皆はぼくの仲間だ!お前がこれ以上ぼくの友達を馬鹿にするなら、容赦しないぞ!!」
「へえ?容赦しないって、しなかったらどうするって言うんだい?弱虫のロングボトム」
「っ!こうするんだ!!」
ネビルは拳をにぎると、まっすぐドラコに突き出した。しかし悲しい事に、ネビルのパンチの速度よりドラコの反射神経の方が優れていた。
勢い余ったネビルがベンチに衝突すると、すぐさまグラップの太い腕が飛んできてネビルの体を絡めとった。クリスがネビルを助けようと座席をまたいだ瞬間、こんどはゴイルの太い腕がどこからともなく飛んできてクリスの体を捕らえた。
「グラップ、ゴイル、よくやったぞ!……さて、ロングボトム。お前が一生に一度だけ勇気を振り絞った事を、これからたっぷり後悔させてやるよ」
ネビルは力の限り体をよじったが、グラップの腕が痛いくらい体を締め上げていて抜け出す事ができない。クリスもゴイルから逃げ出そうと必死に体を動かすが、女の力でゴイルに敵うはずもない。周りの生徒はみんな試合に集中していて、全くクリス達に気付いてくれず、大声を上げても全て歓声にかき消されてしまう。
ついにドラコが懐から杖を取り出した。嬲るような視線がネビルに注がれ、まるでスローモーションのようにゆっくりと杖が振り上げられる。クリスはこれから起こる惨劇にギュッと目をつぶった。
もう駄目だ、ああ、神様…――
「――偉そうなこと言ってるわりには、背中ががら空きだぜ、マルフォイ!」
突然割り込んできた声と共に、ドラコの体が前のめりに吹っ飛ばされた。クリスが恐る恐る目を開くと、飛び込んできたのは光り輝く太陽を背に、燃えるような赤い髪を揺らす少年の姿だった。
「ロンッ!!」
「ウィーズリーッ!……貴様ぁ!!」
「ずいぶん男前が上がったじゃないか。ローブもそっちの方がお前にお似合いだよ」