第26章 【大乱闘Hブラザーズ】
ギギギッとかみ締めた奥歯が痛かった。
クリスだって、リーの事はあまり好きじゃない。いつも双子と一緒に悪巧みばっかりしているし、前の試合のときにもまんまと一杯くわされている。だけど、ドラコに馬鹿にされるような人間でもない。
怒りで震える拳を必死に圧し止めているのはクリスだけではなかった。険しい顔でピッチを見つめるクリスの隣で、ロンも同じような顔でローブを握り締めている。ドラコはそれを分かっていて、今度はロンの家族に矛先を向けた。
「所詮グリフィンドールなんて騒ぐしか能のない馬鹿な連中の集まりだからね。仕方が無いか。もし一家揃ってグリフィンドールなんてヤツがいたら、そいつはきっと馬鹿のサラブレッドだろうな。なあ、そう思わないかウィーズリー?」
「ハッフルパフの見事な連携プレー、しかしそこに現われたるはグリフィンドールのお騒がせ名コンビ、フレッド&ジョージ・ウィーズリーだぁ!」
ドラコのしつこい嫌味に、ロンもクリスもよく耐えていた。しかし2人の頭には試合の内容なんてほとんど入っていなかった。なんとか試合に集中しようとすればするほど、耳がドラコの方に向いてしまう。
例えフレッドとジョージが素晴らしいコンビネーションで相手のチェイサーにブラッジャーを叩き込み、グリフィンドールから割れるような歓声が上がろうと、ドラコの声が遮られる事はなかった。
「よくあんな箒で試合ができるよ、あんなみじめな箒でさ。まあ、みじめなのはあいつらの箒だけじゃないみたいだけど……そうだろう?キャプテンは脳みそまで筋肉だし、ウィーズリーは貧乏で箒どころか着る服にも困ってるそうじゃないか。極めつけはポッターだな、あいつはクリスマスに帰る家もないみすぼらしい孤児だ」
これ以上、耐えろという方が無理だった。クリスが勢い良く後を振りかえると、それと同時に隣りでもう一つ人影が動いた。しかしそれはロンではなく――その隣りに座っていたネビルだった。
「……ネビル?」
「どうしたロングボトム、お前もチームに入りたいって言うのかい?きっとお前なら入れてくれるさ、なんて言ったってお前はグリフィンドール1、みじめで弱虫な負け犬だ」
「う……うううううるさい!黙れっ!」