第26章 【大乱闘Hブラザーズ】
ドラコは横目でクリスの顔を見ながら、低く嘲った。ロンの拳は既に固く握られていたが、それをハーマイオニーが諌めた。スネイプが見ている前だ、観客が暴動を起こしたと言ってペナルティーを取られないとも限らない。
殴る代わりに、3人は両手を固く握り祈った。どうかハリーが無事でありますように、ついでに流れ弾のブラッジャーがドラコの脳天にぶつかりますようにと。
「試合、開始ぃ!!」
リーの声がグラウンド全体に響き渡り、ついに試合の幕が上がった。スネイプはクワッフルをトスする時、わざとハッフルパフ側に上げるというせこい業をやっていたが、それくらいなら予想の範囲内だ。本当に心配するべきは試合ではなく、ハリーの身なのだから。
「ハリーはどこにいる?」
「今はまだ上空にいるわ、そんなに早くスニッチが見つかるわけ無いもの」
双眼鏡を覗いていたハーマイオニーの声は緊張していた。空高く上ってしまえばスネイプの手は届かないが、前回のように箒から振り落とされないとも限らない。
「――ハッフルパフのチェイサーがゴールに向かって突っ込んで行く!入るか?止めるか?入ってしまうのか!?……いや、ウッドが止めたー!ナイスプレー、流石はクィディッチの恋人オリバー・ウッド!!」
「チッ……これだからハッフルパフみたいな劣等生の集まりは駄目なんだ……まあ、グリフィンドールには丁度良い相手かもしれないけどね」
ドラコの聞こえよがしな嫌味は、周囲から上がる歓声にかき消される事なく、クリスの耳にきちんと届いていた。しかしクリスは聞こえないふりをして、なんとかドラコの顔を見ないように努めた。相手にしたらそれこそドラコの思う壷だ。
「っと、ここで審判がペナルティーを出しました。どうやらウッドがハッフルパフのチェイサーを突き飛ばしたと言っています。いったいどこに目をつけてるんでしょうかねぇ――やだなぁ、冗談ですよ先生――何はともあれ、試合はハッフルパフのペナルティーシュートからの再開です」
「あの実況の男も、もっと考えて喋ればいいものを。いつも余計な事をべらべらと……ああそうか、考える脳みそがないからあんな喋り方しか出来ないのか」