第25章 【覚悟完了!】
「お前らに緊張感が無さ過ぎるんだ!いいか、今日の審判はよりによってあのスネイプなんだぞ。フェアにやれば我々がハッフルパフに負けるはずが無いが、奴は必ず邪魔をしてくるはずだ。そうなれば寮杯はまたしてもスリザリンの手に渡ってしまう」
「どうかな?ハッフルパフにはセドリックがいる」
「なんの、我がチームにだってスピード・エースのハリーがいるんだ!」
ウッドは自信たっぷりに笑うと、それまでぼんやりとボードを眺めていたハリーの肩を強く叩いた。ハリーは悲鳴こそあげなかったが、不意に肩をたたかれて大きく体を震わせるのをフレッドとジョージは目撃した。最近のハリーはずっとこうだ。
「さっきも説明したとおり、今日の試合はハリーがいかに早くスニッチを掴むかにかかってるんだ。頼んだぞ、ハッフルパフなんて目じゃないって所を見せ付けてやれ」
勝利に向けて拳を硬く握り締めるウッドの隣りで、ハリーは力なく笑った。こんな調子でハッフルパフの花形エース、セドリック・ディゴリーに勝てるわけが無い。フレッドもジョージもそれが分かっているからこそ、こうして動いているのだ。
「ウッド、そろそろ時間よ」
「よしっ皆!今日は気合入れていくぞ!!」
キャプテンのウッドのかけ声がほとばしる。選手としてはいつになっても緊張と気力がみなぎる瞬間だが、ただ独りハリーだけは俯いたままトボトボと控え室を後にしようとしていた。それを見たフレッドは、耐えかねた様に小さく舌打をした。
――バンッ!と大きな音が控え室の壁を伝う。気が付くとフレッドの長い腕がハリーの行く手を遮っていた。
「なっ、なに?なんなのフレッド?」
「フレッド、何やってるんだ」
「先に行っててくれよウッド、すぐに終わるさ」
「でも時間が――」
「頼むよキャプテン。悪いようにはしないから」
一瞬眉をひそめたウッドだが、結局双子の言葉を信じ他の選手を連れてグラウンドへ向かった。
気づけばジョージも一緒になってハリーを囲んでいる。いったい何が始まるのか、取り残されたハリーの頬に一筋の汗が流れた。
「今さっきさクリスに会ってきたんだけど、アイツ妙に元気が無いんだ。何か理由を知ってるか?」
フレッドが意地悪にニヤリと笑ってその名前を口にすると、ハリーの顔が明らかに動揺していた。