第25章 【覚悟完了!】
ハリーとの事ですっかり気を落としていたクリスだったが、もちろんドラコがネビルにした仕打ちを忘れたわけではない。あのネビルの泣き顔を思い出すだけで腸が煮えくり返り、ドラコを一発ぶん殴ってやりたい衝動に駆られるのを必死で抑えていた。
「失せろドラコ、今度という今度こそお前に愛想が尽きたんだ。もう金輪際その顔を私に近づけるな」
それはいつも聞くクリスの声ではなかった。冷たい、情など欠片もない声。
クリスに対してはいくらか寛容に接してきたドラコだったが、流石にこう言われて黙っているわけがない。ドラコは細い眉をキッと吊り上げた。
「この僕に向かってその言い草はないだろ、クリス。僕が一体なにをしたっていうんだ」
「“なにをした”だって?ネビルに呪いをかけておいて良くそんな事がいえるな」
とうとうクリスが席から立ちあがると、ドラコは特有の薄ら笑いでそれに応えた。
教職員用テーブルには、まだ沢山の教師が残っている。一触即発の雰囲気を危惧しハーマイオニーがクリスを止めようと席を立ったが、ここでまたクリスの悪い癖が出てきた。頭に血が上った今の彼女に、ハーマイオニーの言葉が届くことはなかった。
「ロングボトム?――ああ、あの事か。だけど、君には何の関係もないだろう?」
「関係あるとか、無いとかの問題じゃない。人を傷つけておいて平然としているお前の態度が頭にきてるんだ」
「人じゃなくて、相手はロングボトムだ。誰だって道端にゴミが落ちてれば除けるし、虫がいれば払いのけるだろう?」
ドラコに合わせて、グラップとゴイルが大きな笑い声を上げた。クリスの後でローブを引っ張りながら「手を出したら駄目、絶対に駄目」と呪文のように繰り返すハーマイオニーを振り切り、手が駄目なら足だと、クリスは靴のかかとでドラコのつま先を思いっきり踏みつけた。
「――痛っ!何をするんだクリス、父上に言いつけるぞ!」
「好きにすればいい!まったくお前みたいなヤツと11年も一緒にいたなんて思うと虫唾が走る。お前にネビルを笑う資格なんて無い、お前の方こそ虫けらにも劣るクズだ!」
悔しかった。人を傷つけてなんとも思わないドラコも、その後で哂うグラップとゴイルも。そして自分も彼らと同類なんだと思うと、憎く、辛く、悲しく、そして恥ずかしかった。