第25章 【覚悟完了!】
「……クリス?何してるの?」
「ああ、悪い、ハーマイオニー。起こしちゃったか?」
クリスが尋ねると、ハーマイオニーは天蓋の隙間から僅かに顔を覗かせて小さく首を振った。それはクリスに気を使ったからではなく、彼女もまた昨日の夜のことが気になってあんまり眠れなかったのだ。
「ねえ、なにを持ってるの?」
「マグルの電池、私の宝物だ。昨日のお詫びのしるしに、ハリーにこれをあげようと思って」
「……物で釣るのは感心しないわね。それにハリーはきっと喜ばないわよ、それあげても」
クリスの子供っぽい思考に、ハーマイオニーは苦笑いをした。気持ちは分かるが、マグル育ちのハリーに古い乾電池をあげても喜ぶはずが無い。
正直にそう教えてやると、クリスはガックリと肩を落とした。これでもクリスなりに一生懸命考えた結果なのだ。
「そんな……これならハリーも喜んでくれると思ったのに」
「そんな事しなくても、誠心誠意謝ればハリーはきっと許してくれるわ」
「本当に?」
「ええ……もちろんよ」
ハーマイオニーには本当にそれでハリーが許してくれる自信は無かったが、落ち込んでいるクリスを見かねてつい本心以外が口をついてしまった。その後で、ハーマイオニーは最後に心の中で小さく「多分ね」と付け足した。
そしてハーマイオニーの励ましも空しく、結局その「多分」が現実となってしまった。朝クリスとハーマイオニーが談話室に下りていくと、そこにはハリーの姿もロンの姿もなかった。
「ほらっ、あれよ、別に毎朝待ち合わせしてるわけじゃないじゃない」
「うん……そうだな」
確かに毎朝ここで待ち合わせをしているわけではない。しかし昨日の今日では、クリスでなくとも避けられていると思い込んでしまう。
沈んだ気分で大広間に行くと、クリスはすぐにハリーの姿を見つけた。一見その姿はいつもと変わらないように見えたが、相変わらず目の下にはクマが出来ている。
クリスは自分を奮い立たせるように大きく息を吸って背筋を伸ばすと、早足でハリーの座るテーブルに近づいた。
「おっ……おはよう!」
「お早う、クリス」
「……やあ」