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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第25章 【覚悟完了!】


 その日の夜、クリスは夢を見た。ホグワーツに入学する何年も前の、小さい頃の夢だ。ダイアゴン横丁で、たまたま仲良くなった女の子と2人で楽しくおしゃべりをしていると、通りの向こうからその女の子の母親が買い物を終えてやってきた。どこにでもいる、優しそうなおばさんだ。女の子は嬉しそうに、母親にクリスを紹介した。

「ママ、お友達よ。クリス“グレイン”っていうの」

 この時、凍りついた母親の顔を、クリスは一生忘れないだろう。それから2度と、クリスがその親子に会うことはなかった。

【第25話】

 目が覚めたとき、クリスはとても悲しい気持ちだった。しかしそれはなにも小さい頃の辛い夢を見た所為ばかりではない。
 時刻はまだ夜が明けきらぬ早朝。いくらなんでも起きるにはまだ早すぎたが、頭が妙に冴えてしまっている。仕方なく、クリスはベッドから身を起こした。

 薄暗い部屋の中では、部屋の真ん中で景気良く燃える暖炉が唯一の心の救いだった。暖かに燃える炎をぼんやりと眺めながら、クリスはハリーの事を思った。
 ハリーに謝らなくてはいけないことは分かっている。しかしあんな事を言ってしまったのに、どうすればハリーは許してくれるのかが、クリスには分からなかった。気が強く素直さに欠け、我侭放題に育ってきたツケが、今さらになって回ってきている。
 ベッドの脇に腰をかけてクリスは永延と頭をひねった。なにをしようか、なんて言おうか、自分なら何をされたいか――

(そうだ!たしかトランクケースの中に……)

 クリスは飛び跳ねるようにしてベッドから降りた。慌ててトランクの中を漁ると、確かに“それ”はトランクの内ポケットにあった。銀の刺繍が入った緑の巾着を手に取ると、クリスは中から古い乾電池を取り出した。“デュラッセル社製R6アルカリ乾電池”と表記されたそれは、クリスの大切な宝物だ。これを手放すのは惜しいが、もしハリーが喜んでくれるなら……決意の表情で電池をかざすクリスの背中に、突然小さな声が降ってきた。
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