第24章 【かすでんな はみぞの のみき】
「それが買い被りだっていうんだよ!それじゃあクリスはその目で見たって言うの?僕が『例のあの人』を倒すところを。僕の両親が殺されるところを。君はっ……君はなにも分かってないじゃないかっ!!」
ハリーが叫んだ、まさにその時だった。突然談話室の扉が開き、みんなの注目が一斉にそちらにそれた。
現われたのはネビルだった。息も絶え絶えに、不自然なほど両足をピッタリとくっつけて、倒れこむように談話室に入ってきた。ネビルが呪いをかけられている一目瞭然で、中には毛虫のように身をよじるネビルを見て笑う生徒もいたが、ハーマイオニーはすぐさまネビルの元に駆け寄った。
ロンも、一瞬ハリーとクリスに目線を送ると、ネビルを助け起こしに向かった。確かに今は言い争いよりネビルのほうが大事だ。ハリーとクリスもその後に続いた。
「それで一体どうしたんだよ、その足」
ロンがたずねてもネビルは答えなかった。横目でチラリとクリスの顔をうかがうと、怯えるように身をすくめた。ハーマイオニーが杖を一振りして呪いを解くと、もう一度ネビルに問いかけた。
「ねえネビル、笑わないから教えてちょうだい。いったい誰があなたに呪いをかけたの?」
「……マ、マルフォイが……図書館から出た時、後から襲ってきたんだ」
「――あいつ!」
言うが早いか、クリスは反射的に談話室を飛び出そうとした。しかし、その腕をロンがとっさに捕まえた。
「待ったクリス、どこに行くつもりだよ」
「決まってるだろう、ドラコの所だ。あいつに一言文句を言ってやる!」
「ダメだ、今のクリスじゃマルフォイと喧嘩するだけで何の解決にもなりゃしないよ――文句を言うのはネビル、君の役目だ。君が自分でマルフォイに文句を言わなきゃ何も変わらないぞ」
「ぼっ、ぼく、そんなの出来ないよ!」
ネビルが泣きそうな声でそう言うと、密かにこちらを伺っている生徒の忍び笑いが聞こえ、クリスは腸が煮えくり返りそうになった。ネビルが貶されているのに、どうしてロンはクリスが出て行くのを止めるのか彼女には理解できなかった。
しかし、ハーマイオニーもロンの意見に賛成的だった。