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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第24章 【かすでんな はみぞの のみき】


 ハリーはクリスの顔も見ず、俯いたままぼんやりと答えた。
 ホグワーツに帰ってきてから、どうもハリーの様子がおかしいかったが、クリスは単なる休みボケだと思っていた。しかし気がついて見れば、ハリーの瞳にいつもの輝きがない。
 ハーマイオニーもそれに気づき、気遣わしげにハリーに声をかけた。

「ハリー大丈夫?具合でも悪いの?」
「え?ああ、ううん大丈夫。ただちょっと……最近寝不足なんだ」

 確かにハリーの目の下にはクマが出来ていた。しかし本人は大丈夫だと言っているし、あんまり言うとかえって鬱陶しくなってしまう。クリスは妙なひっかかりを感じながらも、話を先に進めた。

「それとスネイプの事に関して、実はドラコから気になる話を聞いたんだ」
「気になる話?」
「大声出すなよ――スネイプは元々『例のあの人』の部下だったらしい」
「えぇっ――!!?」

 間一髪、叫びかけたロンの口に、慌ててハーマイオニーが手で蓋をした。周りの誰も聞いていなかったのを確認してから、クリスは額をつき合わせるように身体を乗り出して、小さな声で続けた。

「もちろんはっきりそうと決まった訳じゃないけど、多分これは間違いない。だとすると、少なくとも地下室で大鍋をかき回し続ける為に賢者の石を欲しがってるとは思えない。おそらく真の目的はあいつ自身が――おいハリー、ちゃんと聞いてるのかっ!?」

 またもハリーがボーっとしていたので、クリスは思わず声を荒げた。当のハリーは、何故怒られたのか全然分からないという風に、きょとんとしている。

「ここからが大切なんだから、ちゃんと聞けよ。それにこれは君自身にも関係あることなんだから」
「どうして僕に関係があるの?」
「どうしてっ、て……」

 クリスは呆れて二の句が継げなかった。『例のあの人』の話しを持ち出した時点で、多少なりと自分に関係していると察してもいいはずだ。クリスはため息を1つ吐くと、声をなるべく小さくしてハリーに丁寧に説明した。

「よく考えてみろ。不老不死になるって言う事は、敵から身を守る最大の手段でもあるんだ。死なない敵は倒し様がないだろう。いいか“敵”だぞ。スネイプみたいな闇の魔法使いにとっての“敵”なんて、10年前に『例のあの人』を倒した君以外にありえないだろう」
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