第24章 【かすでんな はみぞの のみき】
クリスは鞄から実家の書斎で見つけてきた例の分厚い蔵書を取り出し、3人の目の前に置いた。ハリー、ロン、ハーマイオニーの目が、注意深く表紙の文字をなぞった。
「黄金の……錬金術?」
「百聞は一見にしかず、とりあえず読んでみれば分かる」
3人の疑問は、クリスが初めにこの本を目にした時と同じだ。そしてまた、この本を読んだ後の3人の反応も、クリスと同じものだった。
「これよっ、賢者の石だわ!ニコラス・フラメルはダンブルドアにこれを託したのよ!ここならグリンゴッツよりも安全だもの」
「でも……スネイプはこれを手に入れてどうするつもりなんだろう」
「決まってるじゃないかハリー。金属を黄金に変える、不老不死の妙薬だぜ。自分は一生若いままで、お金がガッポガッポと手に入るんだ。そんなん誰だって欲しいさ、僕だって欲しいもん!」
「残念ながらそうとは限らないな。少なくとも、スネイプはお金に興味がないらしい」
「えっ!?なんで!?」
クリスの一言に、ロンはびっくりしたように大声を上げた。
「新聞の切り抜きに書いてあったじゃないか。『危険を冒してまでグリンゴッツに侵入したのに、何も盗んでいかなかった』って。もしも単純に金銭目的の犯行なら、金庫が空だと分かった時点で他の金庫を狙ってもおかしくない。だけどそうしなかったってことは、スネイプにとってお金は二の次だったってことだ」
「それじゃあスネイプ先生の目的は、あくまで不老不死っていうことなの?」
「でも不老不死になって、アイツどうするつもりなんだろ。まさか永遠に地下室で大鍋をかき混ぜてるつもりじゃないだろう?」
「研究者の中にはそういう人だっているわ。老衰によって、苦労して得た自分の知能を衰えさせないために」
お金より研究が大切なんて信じられないと、ロンは両手を挙げて首を振った。一方その隣りでは、ハリーはうつむいたまま空中見つめていた。しかしどうもその様子は考え込んでいると言うより、ただボーっとしているだけのように見える。
「どうしたハリー、ちゃんと聞いてるか?」
「えっ?……あ、うん。ちゃんと聞いてるよ、スネイプがどうして賢者の石を欲しがってるかってことでしょ」
「そう、それについてなんだけど、実は――」
「でもさ、特別な理由なんて必要かな?誰だって死ぬよりは生きていたいって思うよ」