第23章 【welcome home!】
深い瞑想にふけるクリスだったが、ふと隣りから突き刺さるような視線を感じて、意識を現実に戻した。見ると先程のクリスのように、ドラコがジッとこちらを凝視している。
「な、何だ?」
「クリス……君は今ポッターの名前を呼ばなかったか?」
地獄耳にも程がある。クリスは強ばった表情をつくろいながら、何か巧い言い訳はないかと頭を働かせた。しかし考えれば考えるほど視線がさ迷い、不快な汗が首筋を伝う。
ドラコはその動揺した態度にさらに追い討ちをかけるように身を乗り出し、顔をぎりぎりまで近づけた。
「……昨日の夜から、どうも様子が変だと思っていたけど」
「き、昨日の夜?」
「正直に言うんだ、君は僕に何か隠し事をしているだろう」
「なっ、何もしてない。あったとしてもお前には関係ないだろう!」
ぐいっとドラコの身体を押し返すと、その態度が頭にきたのかドラコは一瞬ムッと顔を歪めたが、すぐに馬鹿にしたような薄笑いを浮かべてクリスを見下ろした。
「そうか……なるほどね、どうしても僕には教えたくない事か。つまり、グリフィンドールの奴らに関する事だな!」
「……はあ?違うよ、ハリー達は関係ないって」
「ほら見ろ、やっぱりポッターの名前が出てきた!僕はまだ『グリフィンドールの奴ら』としか言っていないぞ。語るに落ちたなクリス!」
なんて安っぽい誘導尋問だとクリスは内心思ったが、ドラコの雰囲気に圧されて何も言い返すことが出来なかった。徐々にドラコの声が大きくなっていき、身振り手振りも大きくなる。さらにドラコは、ただ呆然と彼の顔を見つめるクリスに向かって、無駄に雄々しく、やけに自信たっぷりに宣言した。
「いいか、この際だからハッキリさせておくぞ。グリフィンドールの奴らがいかに君に取り入ろうと、君の1番は、この僕だ!今も昔も、これからだってそれは変わらないぞ!だから僕に隠し事なんて絶対に許さないからな!!」
その叫びを最後に、部屋の時が止まった。
先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返り、薪の燃える音があたり空しくに響いた。クリスは相変わらず目を点にしてドラコを見つめ、ドラコもまた、クリスが予想に反し冷静な反応を示している事に、だんだんと戸惑いと羞恥心を感じてきた。
しかし、それも数秒の事だった。