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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第23章 【welcome home!】


 ハッキリしない言い方はドラコらしくない。しかし何を言ってもドラコが言いたがらないので、その内クリスは諦めて隣りの椅子に腰掛けた。暫くは会話も無く、ただ薪の燃える音だけが部屋に響く。クリスは横目でドラコの顔を見た。
 炎に照らされたドラコの顔はいつもと少し雰囲気が違って、少し大人っぽく映った。こうして黙っていればドラコだってかなりの美形だ。いや、元々あのルシウスとナルシッサの息子なんだから容姿が悪いわけがない。だが親譲りのプラチナブロンドも薄い青色の瞳も、その性格が全て台無しにいている。
 しかしそれはクリスにも同じ事が言えた。根本的に似ているのだ、この2人は。

 ドラコの顔を眺めていると、クリスはふとあることに気が付いた。似ていると思っていた父とスネイプ。しかしある物が決定的に足りないのだ。その足りないある物とは何か。

「……ルシウスおじ様だ」
「父上がどうかしたのか?」
「いや、なんでもない」

 これで、今までひっかかっていた謎が解けた。そう、父の目で物を言う物々しい雰囲気と、ルシウスおじ様の冷ややかで侮蔑的な態度。2人の父親の尤も苦手な部分が、スネイプのそれとピッタリ重なる。なるほど、どうりでスネイプが苦手な訳だ。

 ――スネイプと言えば……クリスは再び賢者の石の事を思い出した。
 スネイプが闇の魔法使いだったと言う事は、恐らく間違ってはいないだろう。だとしたら、その目的は何なのか、それが問題だ。永遠の命は、確かに人類の夢かもしれない。しかし己の命を永らえて、スネイプは一体何をしようというのか。不死の身体を手に入れて、果たすべき野望とは……。
 考えて、クリスは急に背筋が寒くなった。闇の魔術に囚われた人間が堕ちる先は、すでに10余年前に一人の人間が体現している。もしスネイプが、当代の「闇の皇帝」に成り代わろうと思っているのなら……世界に再び、闇の時代が訪れるだろう。そしてその時はいま、背後まで迫っているのだ。
 しかし、世界に希望が無いわけではない。

(……ハリー・ポッター)

 轟々と燃える暖炉の炎を見つめながら、クリスは殆んど声を出さずにその名前を呟いた。もしもその時が訪れたら、クリスだけでなく世界中の人間が同じ名を口にするだろう。無責任かもしれないが『ハリー・ポッター』の宿命だ。
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