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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第23章 【welcome home!】


 ずっしりと重い『黄金の錬金術』と題された本の索引をめくっていくと、思わず我が目を疑うような名前が書いてあった。――ニコラス・フラメル。ハグリッドの口から漏れた人物と同じ名前だ。しかし、どうしてこんな古い本に名前が載っているのか。
 高ぶる鼓動を飲み込み、その人のページをめくったとき、クリスは思わず感嘆の声を上げた。

「なるほど、そういうことだったのか」

 ダンブルドアと旧知の仲なら、せいぜい150歳くらいの魔法使いだと想像する。いかに魔法使いがマグルより寿命が長くても、うん百年も生きられるはずがない。しかし、この人物は例外中の例外によって、桁外れに長い人生を送っていた。

――ニコラス・フラメル(Nicolas Flamel)――

14世紀に活躍したフランス人錬金術師。ある日夢で天使のお告げを受け、ユダヤ教カバラの秘術を知る本を手に入れる。そして数年後その本を見事解読し、我々の知る限りでは賢者の石をつくることに成功したただ一人の人間である。
公式の記録ではフラメルは1417年に死亡したという事になっているが、賢者の石によって不老不死を得て、今もなお錬金術の研究に尽力している。


これでハッキリした。スネイプが欲しがっていたもの、それはズバリ『賢者の石』だ。
 それどころかもっと調べてみると、なんと錬金術では火・水・風・土の四元素が全ての基盤となっていると書かれていた。四元素を操る召喚術の杖が、錬金術の集大成である『賢者の石』に反応を示す可能性は十分に考えられる。
 しかし、それでもまだ謎は残されている。

「だったら……スネイプは何の為にこれを手に入れようとしてるんだ――まさか……」

 クリスが小さく呟いた、正にそのときだった。不意に扉の開く音が耳に届き、クリスは反射的に身体を振るわせた。何よりも先にクリスはサッと立ち上がり本に向かって「消えろっ」と命令して指を鳴らすと、積み上げられていた本が瞬く間に消え、元の本棚へと戻った。
 両開きの扉がゆっくり開かれると、そこには黒いローブに全身を包んだ長身の男が立っていた。てっきりチャンドラーが呼びにくると思っていたクリスは、扉元に佇む父・クラウスの姿を見て目を瞬いた。
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