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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第23章 【welcome home!】


 本当はもっと怒鳴ってやるつもりだったが、ああやって泣かれると流石にやりづらい。行き場を失った怒りは手にしていたティーカップに向けられ、悪態と共に叩きつけたソーサーとカップが悲痛な音を上げた。

 それからやっと腹ごなしが終わり、程よい満腹感で多少の苛々も収まった頃、食堂の柱時計が丁度11時を知らせる鐘を鳴らせた。

「そういえば、父様は?」
「ご主人様はお嬢様が起きる少し前に、お花を買いにいかれましたよ」
「ああ……そうか、今日はクリスマスだもんな」

 横に立てかけた召喚の杖に目を移す。毎年クリスマスだけは、親子揃って母・レイチェルの墓前にお参りをすることになっている。
 もう一度時計に目をやり、しばし考えた後クリスは席を立った。

「私は書斎にいるから、父様が戻ったら教えてくれ」
「こんな日にまでですか?せめて今日くらいは……」
「すぐ戻るよ」

 それだけを言い残し、クリスはさっさと食堂を後にした。クリスマス休暇が始まったときから、いや、あの夜禁じられた廊下に忍び込んだ時から、今日という日が来るのをずっと待っていたのだ。
 クリスの足は自然と速くなり、頭の中は不思議と冴えてくる。長い渡り廊下を過ぎ、複雑な彫刻の施された細長い扉の前にたどり着くと、クリスはそっと扉を開けた。

「……ここに来るのも久しぶりだな」

 広い円筒形の部屋は3階立ての吹抜けになっており、壁の殆んどが本によって囲まれている。書斎というよりも、まるで本の塔だ。特別な石で出来た床と天井には一面に巨大な魔方陣が描かれ、室内には一風変わった魔法が掛けてある。
 クリスは部屋の真ん中で立ち止まると、誰に語りかけるでもなく命令した。

「ニコラス・フラメルに関するものならなんでもいい、探し出せ」

その声に反応し、足元の魔方陣が鈍い光を放つと、陣の中心に20冊を超える本が現われた。これがこの部屋にかけられた魔法だ。

 早速足元の本をざっと見わたしてみると、クリスはあることに気が付いた。本の年代がばらばらで、背表紙が擦り切れそうなものから比較的真新しい蔵書まで揃っている。クリスは一番上に積んである古臭い本を手に取った。
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