• テキストサイズ

ハリー・ポッターと小さな召喚士

第23章 【welcome home!】


「そんなまさか……あのドレスなら、さぞご注目の的になられると……」
「“あのドレス”のお蔭で散々だったんだ」

 クリスはチャンドラーの顔も見ずに冷たく言い放った。
 褒められても卑屈になる、貶されると余計腹が立つ。何をどうしても素直に喜べないドレスは、全くもってパーティには不向きだ。しかもよりによってパンジーに馬鹿にされ、昨夜のパーティは、紛れもなく人生最低最悪のパーティだった。
 パンジーの勝ち誇った顔を思い出し、険しい目つきで歯軋りをするクリスの隣りで、チャンドラーは不幸のどん底にでも陥ったように落ち込んでいた。コウモリの様な大きな目玉は溢れんばかりの涙で潤んでいる。思わず怒りを忘れ、クリスの口元がひきつった。

「もしかしなくとも……あれお前が作ったのか?」
「……はい」

 嫌な予感は的中してしまった。弱々しく答えるチャンドラーだったが、次の瞬間、濁流のごとく言葉の波が押し寄せてきた。

「そうです。仰るとおりで御座います。お嬢様を思って私が1針1針心を込めてお仕立て致しました。勿論お嬢様が私めの作ったお洋服をお気に召していない事は存じておりましたが、もう何年も作っていなかったのでせめて1着くらいならと思ったのです。ああ、でもお嬢様が華美な服装はお好きではないからと思って飾りつけもごく僅かに止め、その代わりにパリから極上の生地を取り入れて、勿論色はお嬢様に一番相応しい真紅の――」

 落胆していても、チャンドラーのくどい長台詞が途切れる事はない。台詞を聞き流しながら、クリスは苦々しげにため息をついた。
 手芸とガーデニングは、チャンドラーの趣味だ。目の前に広がるテーブルクロスもチャンドラーのお手製だし、カーテンも同様。おまけに家中見渡してみればレース編みの小物がそこら中に広がっている。例え小さな布切れでさえ余すことなくパッチワークにしてしまうほどだ。最早趣味というより病気に近い。
 今でこそ少なくなっったが、小さい頃の服やドレスはほとんどがチャンドラーのお手製だった。しかし本人の年相応に、腕はいいがセンスは古い。それが嫌で昔に「こんなの着たくない」とはっきり言ったことがあったが、その時も今と同じように酷く落胆していた。

「――そしてスカートの広がりを出すパニエは何重にもフリルを付けて…」
「煩い、もういい。それより食事だ」
/ 375ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp