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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第22章 【屈辱のクリスマス・パーティ】


 密かに握り締めた拳の爪が、グッと手のひらに食い込んだ。自分で言った台詞だが、他人に――特にパンジーに――言われると無性に腹が立つ。しかし目の前で嘲う少女だけには、さとられたくなかった。

「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。今日はブタの仮装でもして来たのか?」

 パーティでの鬱憤を全てぶつけた刺々しい言葉は、ただの憂さ晴らしに過ぎなかった。パンジーは顔を真っ赤にして手を振り上げかけたが、すぐに手を下ろし余裕の表情を見せた。どうやら今夜のパンジーは一味違う。

「何ていわれようと、今日の貴方の格好よりはマシね」
「ふーん、それじゃあ早くその格好を愛しのドラコに見せに行ったらどうだ?きっと驚くよ、『今日はクリスマスなのにどうして七面鳥じゃなくて、豚の丸焼きが立って歩いてるんだろう』ってね」
「ええ、そうさせてもらうわ。今夜は貴方のようなみすぼらしい格好じゃなくて本当によかった」

 いつも口喧嘩は大抵クリスが勝っていたが、今夜はパンジーの方に勝敗が上がった。パンジーは勝利を確信した笑い声とともに人ごみの中に消えていく。見知らぬ豪華なドレスの渦に取り残されたクリスは、今日ほど惨めな気分になった事はなかった。

* * *

「また何をやっているんだ――あの2人は……」

 会話こそ聞こえなかったが、2人のやりとりをしっかり目撃してしまったドラコは呆れたようにため息をついた。聖夜くらい喧嘩せずに過ごせないものか。

「父上、申し訳ありませんが少し外してもよろしいですか?」

 挨拶回りも大切だが、このまま見てみぬふりというのも後味が悪い。少し考えた末、ドラコはまずクリスの所へ行くことにした。パンジーの場合放っておいても、そのうち向こうからやって来て、少し話しを聞いてやれば簡単に機嫌を直すのを知っている。
 クリスがバルコニーへ向かったのを遠目で確認し、自分もその後を追った。何を考えているのか、この寒空の中ろくな上着も無しに、手すりに頬杖を付き、物思いにふけりながら星を眺めている。

「クリス、こんな所にいて風邪を引いても知ら――…」

 静かに振り返る彼女を見て、ドラコは思わず生唾を飲み込んだ。背後から入るシャンデリアと月明かりに照らされ、肩越しに自分を見つめる少女は、最早彼の知るクリスではなかった。
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