第22章 【屈辱のクリスマス・パーティ】
言葉とは裏腹に、クリスの表情は険しかった。
クリスが褒められるのは、何も本当に容姿が優れている所為だけではない。寡黙で生真面目で目立たない性質の父に代わって、話題の種にされているだけとも言える。
「そういえば、クリス様は今年ホグワーツに入学されたんでしたな。如何です?学校の方は」
「とても充実しています。グリフィンドールのお友達も沢山出来ましたし」
「グッ…グリフィンドール!?――まさかグリフィンドールに組分けされたのですか?スリザリンではなく!?」
男爵は夫人共々、この世のものとは思えぬ者を目撃したような顔をしたので、クリスの口角が皮肉そうに持ち上がった。パーティの最中こんな時ばかり楽しくなるなんて、本当に自分でも性格が歪んでると思う。
「ええ、スリザリンではなくグリフィンドールですよ、男爵。素晴らしいお友達が沢山いますの、あのハリー・ポッターさんに、マグル製品不正使用取締り局のウィーズリー氏の息子さん。あと、マグル出身の女の子とも親しくさせてもらっているんです」
「は、はは…なんと……いやはや、素晴らしい交友関係をお持ちのようですな……」
古臭い純血主義者にとってこの台詞は衝撃すぎただろう。男の口元は引きつり、髭がぷるぷると小刻みに動いているのを見て、クリスは花がほころびるような満面の笑みを見せた。男爵達はこぼれ出る言葉を必死で隠し、何かを訴えるようなキツイ視線だけをクラウスの方に投げつけた。
「……クリス、すまないが何か飲み物を持ってきてくれないか?」
「分かりました、父様」
深いため息と共に吐き出された言葉が唯の厄介払いだというのは、すぐに察しがついた。それならお望みどおりにその場を離れると、今度はそれを狙ったようにパンジー・パーキンソンがこっちに近づいてきた。
「こんばんは、クリス。貴女も来ていたのね、全然気づかなかったわ」
子供っぽいクリスの衣装と違い、パンジーは最新流行の豪華な淡いピンク色のドレスを身にまとい、勝ち誇ったように胸を反り返らせている。この時には、既にパンジーの次の言葉は決まっていた。
「それにしても……なぁにその格好。今夜は仮装パーティのつもりで来たのかしら?」