• テキストサイズ

ハリー・ポッターと小さな召喚士

第22章 【屈辱のクリスマス・パーティ】


 召使に応接間に通されると、ゆったりとしたソファーに向かい合う形で父とルシウスが座っていた。普段なら何の不思議も無い組合せだが、この時ばかりは変な勘繰りをしてしまう。

「おお、これはこれは……今宵はまた一段と美しいな、まるで大輪の薔薇のようだ」
「ありがとう御座います。おじ様も素敵な装いです」

 褒められたのは嬉しくない訳ではないが、あまりドレスについては触れて欲しくないというのが正直な意見だった。

「……久しいな、クリス。息災であったか?」
「ええ、父様もお変わりが無い様でなによりです」

 これは相変わらず仕事一辺倒の父に対する嫌味も含んでいたが、クラウスは全く気づく事はなく満足そうに頷いただけだった。クリスマスぎりぎりまで仕事とは、個人でやっている古美術商がそんなに忙しいのか、それとも本当に娘よりも仕事が大事なのか、判断しかねる。もしかしたらその両方なのかもしれない。

「さて…私達は先に広間の方に行っているぞ」
「ああ、そうしてくれ。私もナルシッサ達が来たら向かおう」
「………それではな」

 部屋を出ると、クラウスは必要以上に声を落としてクリスに囁いた。いつもは鬱陶しい髪を、今日は後ろで結わいているので表情が良く分かる。クリスの目から見た父の顔は、少し固かった。

「クリス、先ほどルシウスと話していたんだが、召喚術が順調というのは本当か?」
「ええ――と言っても、気持ちだけで確かな証拠はありませんけど」

 スネイプの計画の事を話し合っていたのではないと知り、クリスは少し安心した。やはり2人が計画に関わっているはずがない。
 クラウスは何かを考え込むように目線を逸らすと、またクリスに向き直った。

「それで、今日は杖はどうした?」
「え?――あ!……えっと、部屋に、置いたまま…です……」

 早く部屋を出たい一心で飛び出した時、つい杖をそのまま置いてきてしまったことをやっと思い出した。常に肌身離さず持っていろと言われたのに、なんて失敗だ。クリスはぽつりぽつりと喋りながら、父の顔色をうかがった。

「すみません……今から取に行ってきます」
「いや、今日はそのままで構わない。――だがこれからは気をつけなさい、あれはお前の身を守ってくれる大切なものだ」
/ 375ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp