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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第22章 【屈辱のクリスマス・パーティ】


 本当に心の底から「結婚が女の幸せ」と思っているナルシッサの顔は、これ以上ないほど幸せに満ちていた。しかし言わせて貰うなら、結婚して不幸になった人も、結婚せず幸せになった女性も沢山いる。クリスとしてはこう古臭い考え方に自分を当てはめられるのは窮屈で仕方なかった。そもそも政略結婚で、好きでもない男のもとに嫁ぐ事自体が不幸そのものだと思わないのか。
 刺々しい言葉になるのを必死に押し止め、クリスはナルシッサが傷つかないよう言葉を選んだ。

「私の我儘だって事は分かっているんですけど……ごめんなさい、まだ結婚なんて考えられないんです。でもおば様の義娘になるのは、私も素敵な事だと思います」
「貴女にそう言ってもらえると嬉しいわ。――そうね、このことはゆっくり考えれば良いわ。まだ2人ともまだ子供なんですものね」

 なんとか話が一区切りついて、クリスはふっ、と肩の力を抜いた。しかし、2人の間にはどことなく気まずい空気が残っていて、鏡に映るナルシッサから視線を逸らした。
 胸がモヤモヤして落ち着かないが、ナルシッサに怒りを向けたくないクリスは『それもこれも全てドラコの所為だ』と、全ての責任をドラコになすりつけた。
あいつが余計な事を言わなければ、今まだ良い気分でおば様と話しているはずなのに。そう思うと、ドラコに対して段々怒りが沸いてきた。
 その時、タイミング良く扉を叩く音が聞こえた。

「失礼致します、奥様。たった今グレイン様がお見えになられました」
「もうそんな時間?ああ、ちょっと待って頂戴クリス。はい、これでいいわ。素敵になった貴女をお父様に見せていらっしゃい」
「ありがとう御座います、おば様。それでは父様が待っていますので、失礼致します」

 丁度いい口実が出来たと、クリスは急いで部屋を出た。しかし扉の外で待っていたのは父ではなく、なぜかドラコだった。その顔を見たとたん、クリスの怒りが頂点に達した。

「や、やあクリス。今夜はまたい――いぃ痛っ!」
「このお喋り!!」

 ドラコが何か言いかけていたが、全部聞き終わることなくクリスはドラコの向こう脛を蹴っとばした。痛みにうずくまりながらドラコは非難めいた言葉を口にしたが、クリスは振り返ることなくその場を通り過ぎた。
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