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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第21章 【スネイプの秘密】


 ルシウスの妻でありドラコの母であるナルシッサは、クリスにとっても母親代わりの女性だ。ナルシッサもルシウス同様、またはそれ以上にクリスを娘としてみている。ナルシッサの白く柔らかい手が頬を撫でるのを、クリスはなすがままにされていた。

「長旅で疲れたでしょう、もう食事の用意は調っていてよ。2人とも先にお部屋に行って着替えていらっしゃい――ああ、そうそう。クリスの荷物はもうお部屋に届いているわ」

 ここで言う部屋とは、クリスの私室のことだ。他人の家に自室があるというのもおかしな話だが、これこそ家族同然の付き合いをしてきた証だろう。
 言われたとおり部屋に行ってみると、ベッドメイクも施され、すでにクローゼットには洋服がかけられていた。流石にマルフォイ家の召使は優秀だ、絨毯にはチリ一つ落ちていないし、豪華な家具にもわずかな手垢すら付いていない。暖炉の上や壁に飾られたマルフォイ一家との写真もピカピカに磨き上げられ、輝くフレームの中のクリスは眠そうに目をしばたいていた。

「まさかこうなるなんて、予想外だったな」

 1枚だけ飾られている父親との写真を見ながら、クリスはそう1人ごちた。
 父が寡黙――もとい無口なのは知っているが、こういう事はきちんと説明しておけと心の中で毒吐く。帰ったらすぐに家の書庫でニコラス・フラメルの事を調べようと思っていたのに、おもいっきり出鼻をくじかれ、クリスは僅かに唇を噛み締めた。

「頼みの綱はハリー達か……それまでスネイプが動かなきゃ良いんだけどな」

 列車の中で聞いた話は、クリスの胸の不安をあおるだけに終わった。しかしホグワーツから遠く離れたこの場所では、万が一ハリー達の身に何かが起こった時に助けてやる事ができない。今できる事といえばたった1つ、ニコラス・フラメルの正体を暴く事だ。

 幸いグレイン家の書庫ほどではないにしても、マルフォイ家の書斎にも多くの本が揃っている。しかしそこに入るにはルシウスの許可が要るし、ルシウスはまず子供達を書斎に入れたがらなかった。
 おそらく今回も断られるだろうが、まごついている暇はない。こうなったら当たって砕けるまでだと、夕食の席でクリスは早速ルシウスに書斎を貸してくれるよう頼んだ。
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