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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第21章 【スネイプの秘密】


 満足そうに――普段の気取った鼻につく薄笑いとは違い、本当に満足そうに――ルシウスが微笑んだ。学校の成績も素行も自慢できるものではないが、召喚術に関してだけはクリスも自信が付いてきている。だがあのたった一言だけで、まさかルシウスがこれほど喜ぶとは思っていなかったので、少し面食らってしまった。
 ルシウスはこの事でよほど気を良くしたのか、それ以降は寮についても婚約についても一切触れなかった。


 やがてクリス達を乗せた車は夜の街をつき抜け、時には空を飛び、時にはマグルの庭を突っ切り、電柱や壁が避けてくれるのをいい事に空いた歩道を走り、幾つもの家々を通り過ぎて馬鹿でかい門をくぐると、広い石段の前に停車した。

「あれ、ここって……」

 そこは他の誰でもない、マルフォイ家の館の真ん前だった。てっきりグレインの屋敷まで送ってくれるのだとばかり思っていたクリスは、見慣れた屋敷を前に足を止めた。

「おや、クラウスから聞いていないのかな。彼が仕事の都合でクリスマスまで帰れそうにないから、それまで君を我が家で預かっていて欲しいと頼まれたのだが」
「……いいえ、何も。ただ『パーティに呼ばれているから、必ずかえって来い』としか」
「全く、仕方が無いな……あいつも。まあいい、とにかく入りなさい。ナルシッサもお前達が帰ってくるのを楽しみに待っているんだ」

 石段の上にはすでに何人もの召使いが整列して当主とその子息、そしてその許婚の帰りを待っていた。貧乏貴族のクリスからすれば、この大仰なお出迎えの儀式はどうも疲れる。大きな樫の扉が開かれると、今度は玄関に待機していた召使いが「お帰りなさいませ」と一斉に頭を下げ、それを通り過ぎてやっと大広間にたどり着いた。

「お帰りなさい、あなた達が帰ってくるのを心待ちにしていたのよ」
「母上、ただ今帰りました!」

 大広間から伸びる大階段の天辺から、プラチナブロンドの美しい貴婦人がゆっくりと降りてきた。ロココ調でかためられた屋敷に相応しい豪華なローブが、1段降りる度にふわりふわりと揺れ、まるで計算されたかのように隙がなく美しい。

「おば様、お久しぶりです」
「よく来てくれたわ、クリス。あなた達のいない間、私はどんなに寂しかった事か。ああ……ドラコもクリスもよく顔を見せて頂戴」
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