第21章 【スネイプの秘密】
ルシウスはクリスの父・クラウスと昔からの親友で、仕事にかまけて家を空けてばかりの父に代わり、小さい頃はよくクリスの面倒を見てくれて、幼馴染の父親と言うよりは親戚に近い存在だった。ルシウスもクリスを可愛がっていて、今日もドラコのついでにクリスも迎えにきてくれたらしいが――今は少しばかりきまりが悪い。
「ところでクリス、ドラコから聞いたんだが……まさか君のような者が、スリザリンではなくグリフィンドールに入るとは、私は夢にも思っていなかったよ」
「ああ、やっぱりきた」と、クリスは苦笑いをしながら息を吐いた。ルシウスに会ったらこの事を言われるというのは、既に予想済みだった。グレイン家の一人娘で、仮にもマルフォイ家に嫁ぐ予定の者がグリフィンドールに入ったという知らせは、当主のルシウスにとっては正に凶報だっただろう。眉間のしわがそれを物語っている。
「父上、どうにかクリスをスリザリンに移すことは出来ないんですか?それでなくても最近のクリスときたら、孤児のポッターや面汚しのウィーズリー、それに穢れた血のグレンジャーなんかと付き合っているんだ。もう少し自分の立場と云うものを認識してもらわないと」
ここぞとばかりにチクるドラコにクリスは鋭い視線を投げつけたが、ドラコはそれを平然と無視した。ルシウスの前ではクリスも強く出られない事を、ドラコも知っているのだ。
肩身が狭そうに俯くクリスを、ルシウスは冷たい灰色の目で見下ろした。
「それは本当かね、クリス?」
「う、あ――……はい」
消え入りそうな声で認めると、ルシウスは指先を軽く額に当て、大げさにため息をついてみせた。
「……ふ…む、それは好くない傾向だな。しかし残念な事に、一旦組分けされたものを覆すというのは非常に難しい事だ。例え私1人が決定しても、他の11人の理事が賛成しない事にはどうにもならないだろう」
それを聞いてクリスはホッとした。前は自分がグリフィンドールに選ばれた事が不思議でならなかったが、何だかんだで今ではグリフィンドールにいる事に何の違和感もないほど、グリフィンドールに馴染んでいるのだ。いくら世話になっているからと言って、それを勝手に替えさせられるなんて堪ったもんじゃない。