第21章 【スネイプの秘密】
【第21話】
列車は徐々にスピードを落としキングズ・クロス駅に入ってくると、ホームはすでに迎えの家族で賑わっていた。
背の高い魔法使いや年をとった魔女、または入学前の可愛らしい魔女が母親の手をとって兄妹が降りてくるのを待ちわびている姿を見ながら、クリスは父の姿を見つけようとホームを見渡した。しかし目に付くのは皆家族の帰りを満面の笑みで迎える人ばかりで、背が高く真っ黒で鬱陶しい髪をした根暗そうな魔法使いはどこを探しても見つからない。
本当は分かっていたのだ、仕事一辺倒の父がわざわざ娘の迎えになんて来ないと言う事は。しかし笑顔で家族と対面を果たすパンジーやグラップ達の姿を見ると、ため息をつかずにはいられなかった。
「どうしたんだい、クリス。長旅で疲れたのか?」
「いや……そうじゃないよ」
「それじゃあ早く行こう、父上も待ってるんだ」
ドラコがさも当然のように言うので、クリスは何も言えなかった。「早く行こう」も何も、ここでお別れじゃないのか?
目を丸くするクリスにかまわず、ドラコは迎えの黒服に荷物を任せると、さっさと人ごみを分けて9と4分の3番線の間にある柵を潜り抜けて行ってしまった。
呆然とするクリスに、黒服が無言で先を促した。この人はマルフォイ家お抱えの運転手なのだが、いつも真っ黒な外套のエリを立てて、帽子を目深に被って顔を隠し、おまけに一言も喋らない。そもそも、本当に人かどうかすら怪しい風体だ。
戸惑うクリスに、黒服はもう一度無言で柵を潜るよう促し、クリスはしぶしぶ外に出た。そこから今度は黒服に案内されるまま駅の外に出ると、見覚えのある黒塗りの豪華なリムジンが横付けされていて、クリスはやっと今の状況を理解した。
「久しぶりだな、クリス。長旅でさぞ疲れただろう、さあ、乗りなさい」
「お……お久しぶりです、ルシウスおじ様」
思ったとおり、開けられたドアの奥には、息子と同じく輝くプラチナブロンドと青白い顔と尖ったあごが特徴のルシウス・マルフォイが座っていて、クリスはルシウスの機嫌を損ねないよう、いつもより3割り増しで愛想よく微笑んだ。