第20章 【detective】
「考えすぎだ、ハーマイオニー。むしろこれはチャンスなんだ」
飄々とした態度でフギンにソーセージを与えるクリスは、まるで見知らぬ他人の出来事のように全く危機感と言うものを持っておらず、むしろ余裕と自信すら感じられた。
「シェイクスピア曰く、“自ら飛び込む方が良い、手をこまねき待つよりも”だ。ニコラス・フラメルの方は何の手がかりも見つからないし、スネイプだって最近は特に動いてない見たいだからな。それならここは1つ、ドラコ達を使ってスネイプの情報を集めるのが1番だろう?」
「……クリスって、ホント凄い楽観的」
「行動派と言ってもらいたいな」
3人共が忠告していると言うのに、1度決めたら他人が何を言おうと耳を貸さないこの頑固さは、どうにかならないものか。ため息を吐きつつも、そんなクリスに男の子達はもう半ば諦めていたが、流石のハーマイオニーだけは納得できず何度も説得し続けていた。
しかし休暇当日、ハーマイオニーは全く正反対の事を言い出した。
「こうなったら、少しでもスネイプの情報を聞き出してきて頂戴ね」
昨日またドラコにロンとハリーの家族を槍玉に挙げられ、からかわれるという事件があったのだが、その時運悪くその場に居合わせたスネイプに何故かこっちが咎められた事で、彼女は少し考え方を変えたらしい。
ハリーとロンはハーマイオニーよりもよっぽど気が立っていて、クリスをロビーまで見送りながら口々にドラコへの報復について聞かせた。
「何かあったら遠慮なくネサラをけしかけろよ。そんでもって目玉とついでに、髪の毛も全部引っこ抜いてやれ」
「全部よりも、申しわけ程度に残ってた方がよっぽど惨めだ。フィルチみたいで。是非そうしてよ」
「分かったから――ほら、そろそろ戻ったほうが良いみたいだぞ」
ロビーにはすでにドラコとゴイルが待ち構えていて、クリス達の姿を見つけるとニヤリと嫌味っぽく笑って近づいてきた。また一悶着起こされたくないクリスは、ドラコがハリーとロンに近づくより先に前に進み出てうまく彼を引き止めると、外へと促した。
「さ、無駄な時間はないんだから、さっさと行こう。それじゃあ皆、楽しいクリスマスを」