第20章 【detective】
ロンが話の腰を折ると、ハーマイオニーが怒鳴った。ニンニク臭くなる呪いではないにせよ、確かに2人が手を組んでるというよりも、一方的に脅されているという方が納得がいく。しかしそれだったら、どうしてクィレルの前でだけ例の嫌な感覚に襲われるのか。
謎が謎を呼び、一向に光が見える気配すらない。ともかく情報不足が現時点での大きな痛手だった。
それ以来情報収集もかねて、4人はスネイプだけでなくクィレルの行動にも注意するようになった。クィレルは日に日にやつれていっている様で、スネイプに脅されているんじゃないかという疑惑はさらに深まり、用心のため魔法薬学の授業では4人で固まって作業をしない日が無かった。
特にハーマイオニーはトロールから助けてもらった恩を返そうとしているのか、どこに行くにもハリーとクリスの後ろをついて回るようになった。朝食の時でさえ、それまではクリスを時間ギリギリまで寝かせておいたのに、今では自分と同じ時間に起こして大広間に連れて行くという徹底ぶりだった。
お蔭で低血圧のクリスはいつも眉間にシワを寄せながら無言での朝食となったが、ハーマイオニーの気持ちを考えると何もいえず、ハリーもロンもこのお節介に関しては口を出さなかった。
その日もいつも通りハーマイオニーに起こされ、半分眠ったまま食卓に着くクリスの元に、見慣れた家紋入りの足環をつけた1羽のカラスが降り立った。真っ黒い嘴に咥えられた白い封筒にはやはり見覚えがある。カラスはクリスの手に手紙を差し出すと、予想通りの差出人の名前を叫んだ。
「クラウスサマカラ クリスサマヘ クラウスサマカラ クリスサマヘ」
「ああ……やっぱり父様か」
クリスはその場で父から送られた手紙の封を切った。無口で筆不精な父が手紙を寄こすなんて、よほどの事がなければまずありえない。逆を言えば、寄こした手紙はそれほど重要だということだ。取り出した真っ白い羊皮紙に書かれた文章は短く、しかしクリスの目を覚まさせるのには十分だった。
「う゛っ!……分かっていたけど、やっぱり今年もか」
手紙の内容は簡潔に「マルフォイ家のクリスマス・パーティに今年もよばれているので必ず帰って来るように」と書かれていて、クリスは肩をおろした。