第20章 【detective】
「うーん……ニコラス…ニコラス……有名なニコラスっていうと、聖ニコラスとかは?」
「それってサンタクロースの元になった人でしょう。もうとっくに死んでるわよ」
「それじゃあ……ニコラス…ニコラ――うーん、ニコラ・テスラなら知ってるんだけどな」
「誰だよ、ニコラ・テスラって」
「知らないのか?交流電流の父とも呼ばれた有名な発明家を。は~あ、ウィーズリー氏の息子ともあろう者がこんな偉大な人物も知らないとは」
「僕をクリスやパパみたいなオタクといっしょにしないで欲しいね。って言うか、僕らが調べなきゃいけないのは『魔法使いのニコラス・フラメル』だろ?」
ロンの言うとおり、クリスの趣味兼特技である無駄な雑学とマグル学も、今はお呼びでない。調べなくてはいけないのはマグルではなく魔法使いなのだ。せめて以前さんざん図書室で調べていた時の記録でも残っていればいいのだが、残念ながらわざわざメモをとって残しておくほどクリスは殊勝な性格ではない。
「せめて何かもう1つヒントがあればいいんだけどなぁ」
「分かってる事と言えば、ニコラス・フラメルがダンブルドアに小さな包みを託して、グリンゴッツからこのホグワーツに移動させた。そしてそれをスネイプが狙ってるって事だけか」
改めて情報を整理してみると、未だ不明瞭な点が多いことに驚いた。たったこれだけの情報で謎を解くなんて、例え名探偵シャーロック・ホームズでさえ難しいだろう。せめてニコラス・フラメルがどういう人物なのかさえ分かれば、もう少し調べようもあるのだが。図書館で調べたくても、このままではどこから手をつけていいかも分からない。
「どうせなら、もうちょっとハグリットが口を滑らせてくれれば良かったのになあ。この際他の先生に聞いてみようか?」
「ダメよ、どこからスネイプの耳に洩れるか分からないじゃない。これは私達だけで探すしかないわ」
ハーマイオニーの言葉には誰も反論は出来なかった。確かにスネイプが嗅ぎ回っている以上、下手に動く事は出来ない。ここまできたらもはや頼れるのは自分達だけだ。