第20章 【detective】
談話室に戻ったクリス達を1番初めに出迎えたのは、燃えるような赤い髪の少年が2人と、ドレッドをキメた黒人の少年の笑い声だった。
「ぎゃはははは!サイッコー、傑作だ!」
「イイッ、すごくイイよクリス!まさかそこまでやってくれるとは思わなかったよ」
「美人に磨きがかかったよ、そのうちきっと中国から求婚者が大勢来るぜ!」
あの双子からもらった双眼鏡のインクには特殊な魔法がかけられていて、無理に落とそうとすると余計に広がるようになっていたのだ。そうとは知らず、ハグリッドに借りた薬をわけも分からぬままゴテゴテ塗りすぎたせいで、今やクリスの目の周りはパンダさながらの大きな黒丸に肥大していた。
「しかも聞いたところによると、君あの顔で観客席を走り回ってたんだって?」
「そんなに喜んでもらえるなんて、俺達としても鼻が高いぜ」
「ああ、そのお礼といっては何だけど……受け取ってほしいものがあるんだ――来い、ネサラッ!」
その数分後、フランケン・シュタインさながらの傷を負った少年が3人、談話室の床に転がっていた。
【第20話】
フレッドとジョージとリーから本当のインク落としを奪い取り、やっと宴会のお菓子でお腹を満たすと、クリス達4人は談話室の隅で額を突き合わせてハグリッドの台詞について互いの知恵を絞り集めた。
「ニコラス・フラメル、か……どこかで聞いたような――いや、本で読んだんだっけかな?」
「私も何かの本で読んだ気がするんだけど……ここに来てからもう100冊以上は読んでるからどれだったか覚えてないわ」
「僕も聞き覚えがあるような気がしなくもないんだけど……」
どんなに首をひねらせても、その先が出てこない。頼みの綱のハーマイオニーからも確かな情報が得られず、4人は腕を組んで唸るばかりだった。4人中3人もその名前を聞いたことがあるのだから、必ず有名な人物には間違いないはずだ。