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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第2章 【大切な話し】


 クリスは渡り廊下を突っ切ると、屋敷の一番奥にある書斎の扉を開けた。吹き抜けになっている円形の部屋の壁はそのほとんどが本棚になっており、ありとあらゆる分野の本がぎっしりと並べられている、もしクリスが代々の先祖に感謝する点があるとすれば、この部屋を作ってくれたことと、これだけの本を集めてくれたことだ。

 お目当ての本を数冊本棚から取り出すと、クリスは庭先に出た。別に自分の部屋で読んでも問題はないのだが、また部屋に篭ってしまうと今度はいつ出てくる気分になるか自分でも分からないし、それに外の空気でも吸えば、少しは気分も晴れると思った。

「ん~……はあ、良い天気だ」

 クリスは庭の中でも一番日当たりのいい芝生の上に腰を下ろすと、まずは思いっきり空気を吸い込んだ。閉じこもっていた部屋とは違う、解放された夏の緑の匂いが胸いっぱいに広がる。思った通り、いい気分転換になりそうだ。

 ゴロンとあお向けに倒れると、夏らしい真っ青な空に、白い雲が風にされるがままゆっくりと流れてくのが見る。クリスにはまるで己の人生をあらわしているかのように思えた。
 魔法使いの一族に生まれたがために魔女以外の生き方も与えられず、ただ流されるまま、血と家を守るために、同じ純血の一族と結婚して子を産み、育て、そして死んでいく。約千年もの間、この土の下に眠る先祖が繰り返してきた生き方を、まるでなぞるかの様に。

 そしてドラコとの婚約を受け入れると言うことが、先祖と同じ末路をたどる第一歩になるだろう。そう思うと、叫びだしたいほどの恐怖と怒りが喉元からこみ上げてくる。

 クリスはむくりと起き上がると、そばに置いていた本の一冊を手に取った。「魔法界の英雄達」と題されたその本 は、書庫から持ってきた物の中でも一番新しめの物だが、何回も繰り返し読んでいるため所々に傷や汚れがついている。しかもある人物の項目なんて、あまりにしつこく読み返したせいでページにあとが付き、適当に本を開くと必ずそこが開かれるようになってしまったほどだ。
 そして今回もクリスが本を開くと、ぴたりとその人物のところでページが止まった。
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