第19章 【クィディッチ】
スネイプは一体何のために、ダンブルドアを欺いてまで『ある物』を手に入れようとしているんだろう。それを手に入れて、何をしようというのだろう。
それに目が合ったあの瞬間、どうしてあんな怯えたような顔をしたんだろう。スネイプは――何を、どこまで知っているのだろうか……。
無意識に左手首を強く握りつぶす。同室の女の子達の寝息を聞きながら、クリスは1人眠れぬ夜を過ごした。
* * *
うとうとと眠気がやってきたのは明け方頃だったが、すぐにハーマイオニーにたたき起こされた。
「ほら起きて、今日はハリーの大切なデビュー戦よ。応援するってハリーと約束したんでしょう」
パーバティとラベンダーのベッドはすでに空になっていて、ハーマイオニーも身支度を終えている。朝からハツラツと行動するハーマイオニーは、あまり昨夜のことなど気に止めていないようだ。重い瞼をこすりながら大広間に行くと、すでにハリーとロンが席についていた。
クリスも寝不足でひどい顔をしていたが、ハリーはそれ以上に酷く、青ざめていた。おまけに目の前の皿には美味しそうなチーズ味のペンネが盛られていると言うのに、それをこねくり回すばかりで全然減っていない。
「ハリー、少しでも食べなきゃ体がもたないわ」
「食べたくないんだよ」
いつもどおり紅茶だけを口にするクリスの横で、ハーマイオニーがハリーに忠告した。クリスが朝食を取らないのはいつものことだがハリーは違う。クィディッチの選手が朝食を抜いて、いざと言う時に力が出ませんでしたでは話にならない。
トーストだけでも、と勧めるハーマイオニーだったが、ハリーはそれも断った。ロンもソーセージをほお張りながら「少し食べた方が良い」と口をはさむと、ハリーはいよいよ心労窮まったようにため息をつく。するとそこに、双子のウィーズリー兄弟が親友のリー・ジョーダンを連れて現われた。
「なんだよ、ハリー。食欲不振か?しっかりしてくれよ、今日の試合に負けたら寮杯はお空の彼方だ。それでなくともチャーリーが抜けてから我がグリフィンドールは負け続きなんだから」
「大丈夫だよ……ただちょっと寝不足なだけだから。試合ではちゃんとするよ」
「寝不足?――そう言えば、クリスも目の下にクマが出来てるな。もしかして試合が楽しみで眠れなかった口か?」