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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第18章 【生徒は見た!】


「ポッター、貴様の持っている本は図書館の物だな」

 ハリーの手に握られている本の表紙に見覚えのある図書シールを見つけると、スネイプはしたり顔で口角を吊り上げた。

「どうやら図書館の本を校外に持ち出してはならん事を知らなかったようだな。寄こしなさい――グリフィンドール5点減点」

 「横暴だ!」と噛み付きそうになったハリーを、ハーマイオニーがローブを引っ張って制止させた。スネイプはハリーが食いついてこない事一瞬だけ不満気に顔をゆがめたが、逆に反論できないハリーを見て機嫌を良くしたのか、それ以上は詮索しようとせず、再び足を引きずって城へ引き返していった。

「絶対に規則をでっち上げたんだ、本を持ち出しちゃいけないなんて聞いた事ないよ!」

 スネイプの姿が見えなくなってから、ハリーが怒鳴った。しかし、そうしたところで本が戻ってくるわけでもない。

「でも、あの足はどうしたのかしら……」
「知らないよ、でもすっごく痛いことを願うね」

 その後もハリーのご機嫌は直らず、夕食も口を閉ざしたままろくに食べようとしなかったし、談話室に戻った後も立ったり座ったり、部屋をぐるぐる回ったりと全く落ち着きがなかった。
 どうやらハリーは明日に控えた試合の緊張をあの本で紛らわしていたらしく、誰かが「明日は頑張れよ」とか「期待してるぞ」と声をかけるたびに、ハリーは不安げに顔を曇らせて胸の辺りを擦った。
 そして時計が午後8時半を回った頃、ハリーは突然自分を奮い立たせるように声高に宣言をした。

「僕、スネイプのところに行って本を取り返してくる」

 ロンとハーマイオニーは心配そうな声を漏らしたが、ハリーはもう覚悟を決めたようだ。こうなったらクリスもいい加減腹をくくらねばならぬ時が来たらしい。誰かと一緒に行くチャンスは、今を逃したら今後はきっと無い。図書館から借りた“パーフェクト・盗人ガイド”をテーブルに置くと、すっくと立ち上がった。

「よし……私も行くぞ、ハリー」


 ――とは言ってみたものの、やはり職員室を目の前にすると体がすくんでしまう。ハリーは「他の先生もいるから大丈夫だよ」と高をくくっていたが、クリスには職員室の扉が父の書斎と同じくらい重苦しい物に思えた。この緊張感は到底理屈では拭えぬものだ。
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