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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第18章 【生徒は見た!】


 コン、コン。軽く2回ノックしてみたが返事が無い。もしかして職員室には誰もいないのかもしれない、それはそれで大変都合が良い。
クリスとハリーは恐る恐る扉を開け、隙間から職員室を覗いて見ると、なんと人がいた。しかも、よりによってスネイプとフィルチだった。

 スネイプは何かぶつぶつと文句を言いながらローブの裾をめくり上げた。すると中庭でびっこを引いていた方の足に包帯が巻かれていて、真っ赤な血が滲んでいる。時折堪えきれぬ小さな悲鳴を上げながら包帯を解くと、思わず目を覆いたくなるような惨い傷口が顔をのぞかせた。

「全く、忌々しい……3つの頭に同時に注意なんて出来るものか!」

 唸る様なスネイプの台詞は、クリス達を大きく動揺させた。傷口、3つの頭、ハロウィーンの日に見かけたスネイプの姿。これらが示すモノはもちろん――

「うわあぁっっ!」

 万事休す、もっとよく話しを聞こうと身を乗り出すと、マヌケにもバランスを崩し職員室の床に前のめりに転んでしまった。しかも手にしていた召喚の杖が、ガランガランと大きな音を立てながらスネイプの傍まで転がっていくという不幸まで重なる。

「お前はっ……グレインッ!」
「申し訳ありません、先生!私、ラベンダーのブレスレッドを返してもらおうと……」

 慌てて体を起こすと、そこで初めてスネイプと視線が交差した。クリスの赤い瞳に映るスネイプは、何故か驚きというより怯えているように見え、逆にクリスの方が驚いて目を見開かせる。だがそれも一瞬の事で、素早く視線を逸らし、入口に立っていたハリーに気づくとそれこそ親の敵を見るような目付きで睨み、雷のような怒号を浴びせた。

「ポッター!――貴様ら、いつから此処に!」
「あのっ、ぼっ……僕も、本を返してもらおうと思って」

 スネイプの形相に、ハリーは怯んでいた。いや、ハリーだけでなくクリスも、フィルチでさえも今のスネイプの前では一言も声を発する事が出来なかった。スネイプは乱暴に机の引き出しを開けると、力任せに入口に佇むハリーに向かって投げつけた。

「出て行けっ!今すぐにだっっ!!」

 勿論言われなくともこんな場には1秒たりとも居たくない。ハリーとクリスはそれぞれの荷物を拾い上げると、脱兎のごとく職員室から逃げ出した。
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