第18章 【生徒は見た!】
本をカウンターに持って行くと、丁度ハーマイオニーも先ほど抱えていた本ではなく、別の本を持ってカウンターに来たところだった。
「なあに、その本。まさか変な気を起こしてやないでしょうね!?」
タイトルに目をやり、声をひそめながらもピシャリと一発お小言をくれるハーマイオニーに、クリスは実家の屋敷しもべの姿をダブらせた。
正確にはチャンドラーの場合はピシャリと一発どころでは済まず、永延だらだらと1時間は説教が続くが、口を出さずにはいられないお節介なところは2人ともそっくりである。だからこそ最初の頃は、あんなにハーマイオニーがうっとうしく感じたのかもしれない。
「ちょっと目にとまったから読んで見ようと思っただけだよ。ところで――それ、前も読んでなかったか?」
今度はクリスがハーマイオニーの抱えている本を指した。それは確か初めての飛行訓練の授業の時にハーマイオニーが熱心にネビルに説き聞かせていた本だ。
「ああ、これね。前に読んだ時面白かったからハリーに勧めようと思って。明後日は彼の初試合でしょう、しかも相手はよりによってスリザリンよ。技術も大切だけどこういう細かいルールや、過去の試合を知るのも大切だわ」
「ふぅん……明後日が試合なのか」
「クリス、今さらなに言ってるの?一週間前から皆でハリーの応援用の垂れ幕を作ってたじゃない」
「生憎と宿題が忙しくて、そんなことまで気にする余裕が無かった」
友達なら応援するのが当たり前だと言いたいのだろう。いけしゃあしゃあと言うクリスに、ハーマイオニーは口をあんぐり開けると大きくため息をついた。
「あなたって本当に分からないわ。……友達思いなのか、そうじゃないのか」
「失礼だな、これでも友達は大切にしているつもりだぞ――あ……」
ふと、目をやったその先にいたのは、ネビルだった。すでに重そうな本を2冊も抱えているのに、さらにもう1冊本を取ろうと危なっかしげに本棚に手を伸ばしている。
以前のクリスなら真っ先に駆けつけて、手助けしてやるのだが、ネビルがクリスを恐れていると分かった以上、うかつに近づくのは得策ではない。ハーマイオニーもクリスの視線の先に気づくと、駆け寄ってネビルが取ろうとしていた本を取ってあげた。