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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第18章 【生徒は見た!】


 間を空けることなく、すかさずラベンダーの声がこだました。
 気づいた時には全てが遅かった。『許婚』という単語を聞いて一気に頭に血が昇ってしまい、「しまった」と言う前にもう、ベンダーが満面の笑顔で顔を上げていた。あわてて前言撤回しようにも、ラベンダーの気体に満ちた笑顔の前にはどうしても“NO”とは言えず、結局引き受ける事になってしまった。
 笑顔の引きつるクリスとは裏腹に、ご機嫌な様子で部屋に戻っていったラベンダーとパーバティを見送った後、クリスは机の上で頭を抱えた。

「どうするんだよ?あんな安請け合いしちゃって」
「うるさいな、誰だってああなったら断れないだろう。……どうにかして返してもらうさ」
「でも彼女達も彼女達だわ。クリスに頼まないで、自分の物なんだから自分で取に行けばいいのに。いくらクリスがスネイプ先生から気に入られているからって……」
「なんで皆そう言うんだ?私は別にスネイプ先生から気に入られてなんてないぞ」

 ハーマイオニーの言葉に一応否定はしておいたが、クリスが他のグリフィンドール生に比べて少々扱いが違うのも事実だった。例えば実験中は、スネイプはいつもグリフィンドール生の間を回る時はどんな些細なミスも見逃さず、むしろミスを誘うように威圧感のある目でじっとりと観察しているのだが、クリスの時だけはろくに見もしないし、口も出さない。宿題のレポートも同様に他の生徒は厳しく評価されているのに、クリスだけは少なくとも普通に評価が下される。

 しかしこの事を、クリスは皆の言うような特別扱いだとは思っていなかった。授業中はいつも変な言いがかりをつけられないように、細心の注意を払って作業していたし、レポートだって特に良い点をつけられて事もない。そして入学してもう3ヶ月近く経つというのに、スネイプからクリスに話しかけた事はおろか、目が合ったことすらない。
 それが果たして特別扱いといえるのか。クリスには贔屓と言うよりも、わざとスネイプが関わりを持たないようにクリスを避けているとしか思えなかった。

「あぁー、もう!今日は駄目だ。とてもじゃないが宿題なんてやれる気分じゃない」
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