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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第17章 【祭りの後で】


「それじゃもう帰らない?僕もうおなかペコペコだよ」 

 先ほど感じた悪寒がなんだったのかは気になるが、こんな所で立ち止まったからといって判明する訳ではない。結局その場はハリーに流され、談話室へと戻っていた。

「……もう少し……もう少しで手に入ったものをっっ!!」
「ごっ……ご主人様、お気をお鎮め下さい――」

 わずかだがクィレルのターバンの中から低い、男のくぐもった声が漏れたのは、クリス達が廊下を曲がったあとの事だった。

「必ず手に入れてやる――賢者の石も、召喚師の娘も……」

* * *

 太った婦人に合言葉を言って中に入ると、談話室は溢れるほど人が集い、いつもの丸テーブルには厨房から運んできたのか山のように料理が並べられていた。皆パーティーの雰囲気に浸っていて、誰もクリス達が外から入ってきた事に気が付いていない様子だ。
 そんな中で、グレンジャー1人がポツンと入口のわきにたたずみ、クリス達を待っていた。両者ともどう切り出せばいいか分からず、気まずい空気の中で時間だけがゆっくりと過ぎてゆく。

「さっきは、その……ありがとう……助けてくれて」
「僕らも先生から庇ってもらったから。おあいこだよ」

 グレンジャーが回りにかき消されそうなほど小さい声でそう告げると、3人を代表してハリーがそれに応えた。しかしそれ以上は場が持たず、4人はもう一度「ありがとう」と言うとすぐにその場を離れた。
 ハリーとロンは素早く料理に飛びついたが、クリスは疲れきってそれどころではなかった。しかもよりによってトイレでトロールと格闘した所為か、凄く体が臭う気がする。クリスはそっとパーティーを抜け出すと、シャワーを浴びようと部屋に戻った。

 脱衣所で制服を脱ごうと召喚の杖を壁に立てかけた時、クリスは初めてその存在を思い出した。いくら召喚術に魔法より強力な力があったとしても、使い手がパニックに陥ってしまえばこれも唯の木の棒だ。以前のクリスならそんな自分を許せなかっただろうが、今はただ呆れるばかりだった。

「意外と役に立たないな、私もお前も」
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